開戦4
「ところでお前らは勇者機関に心から忠誠を誓っているのか?」
チェスターがジェームズたちに問いかける。
ジェームズたちは先ほどの挑発の時から静かにしていたが、この質問に対しては答えを返した。
「愚問だな、当たり前だろう。私は勇者として世のために戦っているが、もちろん勇者機関への忠誠ゆえだ。」
ジェームズが堂々と返答する。
その答えを聞き、チェスターは拳を握りしめる。
「両者とも、初戦に参加する者のみ前へ‼︎」
勇者機関の審判が宣言すると、第一回戦、第一試合の参加者が前へ出た。
チェスター側はイングリス、ジェームズ側はジェームズが初戦に参加するようだ。
「では、これより第一試合を始める!
始め‼︎」
遂に戦いが始まった。
ジェームズは手にした長剣を構え、臨戦体制に入った。
「お前は確かパラディンだったな。」
「そうだ。お前らごときゴドフロアの当主が出るまでもない。オーラを見るにお前たちは既にどこかの勢力に買収されているな。」
ジェームズが一瞬固まった隙にイングリスは手にした三叉槍、トライデントの一撃をジェームズの体に叩き込んだ。
だが槍がジェームズの体に刺さることはなかった。
ジェームズは残像を残しその場から消えていたのだ。
すると次の瞬間、イングリスの背後からジェームズが突然現れ、長剣を縦に振り下ろした。
イングリスは背後の気配を感知したが、間に合わず長剣の一撃をその背中に受けた。
剣が鎧を切り裂く、鈍い音が響く。
長剣の衝撃は思った以上のもので、イングリスはよろめいた。
ジェームズは呪文の詠唱を始め、再び姿を消した。
「ほう、なかなかやりおる。この鎧に傷をつけるとはな。」
イングリスは辺りを見回すがジェームズの姿は目視できない。
イングリスは魔力を集中させ、ジェームズのオーラを感知しようとしたその直後、体に異変を感じた。
「体が…重い…だと…」
目に見えないジェームズの攻撃が止むことなく襲いかかる。
鎧にはヒビが入り、ところどころ剥がれ落ちている。
トライデントはジェームズの攻撃で手から弾き飛ばされてしまった。
イングリスは満足に体を動かすことができない。ひざまづいて魔法の詠唱もままならない。
「俺がどうして『高速の剣技』の異名で知られているかわかるか?」
攻撃の合間にジェームズはイングリスに話しかける。
イングリスは体を動かそうとするがうまく動けず、攻撃を受け続けている。