開戦2
「これだけの猛者が集まるのは先の大戦以来だなデニスよ」
「ここからでも奴らのオーラをはっきりと感じられますな、血の気の多い奴らですよ全く」
コロッセオに集まっているのは総勢300名の名だたる勇者たちだ。
開会式の定刻まであと10分ほどー
主催者である勇者機関の者たちは既にコロッセオに集まり準備をしていた。
これから始まる開会式で壇上に立つのはジェラルドだ。
今や勇者機関の顔として対外的な活動のほとんどをこなしている。
相棒のデニスは補佐役として多忙なジェラルドのそばについてもう3年ほど経つ。
魔王討伐の際に陣頭指揮をとり苦しい戦況ながらも勇者たちの活路を切り開いて勝利に貢献した頼もしい男だ。
「マキシは準備に取り掛かっているのか?」
「ええ、先ほど連絡がありました。
事は順調に進んでいるようですのでご心配なく。」
「そうか、それだけが少し心配だったのでな。あとはこのコロッセオで心躍る戦いを見て楽しむとしようじゃないか。」
定刻の鐘が鳴る。
ざわついていた勇者たちは鐘の音を聞き、静まり返った。
ジェラルドは服装を整えるとコロッセオ最上階の観覧席に姿を現した。
ジェラルドは魔法を唱え始めた。左手の指輪が輝き始め、淡い緑色の光がジェラルドを包む。
このコロッセオ最上階からでは階下にいる勇者たちに声は届かない。
彼は魔法で勇者たち全てに声が届くようにテレパシーの魔法を使用した。
ー聞こえるか勇者たちよ
今ここに戦いの始まりを告げる鐘が鳴った。ー
勇者たちの頭にジェラルドの声が響く。
ーあの魔王討伐から3年が経つが、ご存知の通りこの世界から争いはなくなっていない。むしろ争いは増えたと言ってもいい。
では世界から争いをなくし、真の平和を実現するにはどうしたらいいかわかるか?ー
ジェラルドの問いかけにも勇者たちは答えずじっと聞いている。
ーたった一組の覇者を決めるのだ。
この世界から争いがなくならないのは上に立つ絶対的な王者が存在しないからだ。
今の世界には王者や勇者を名乗る者が多すぎるのだ。魔王討伐に参加した程度で勇者とのたまうのはお門違いだろう。ー
にわかに勇者たちから殺気を感じる。
ーならば上に立つ万人の王たる者は、たった一組で十分…!
たとえ勇者であろうと、その数が、存在が、この世の秩序を乱している、だが‼︎ー
ジェラルドは一瞬沈黙した。
ー勝利した者には永久にこの世界を統べる覇権を与えよう…勇者機関の名の下に…
私は今ここに世界最後の戦いの開始を宣言する‼︎ー