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勇者たちの鎮魂歌  作者: 砂場遊美
第2章コロッセオ編
32/209

決戦前夜5

今でもしっかりと脳裏に焼き付いている記憶。

3年前のあの日、平和を手にした日。

これからくる未来に希望を感じた日ー


燃える城、民の悲鳴、兵の屍ー

俺が掴んだ栄光はいとも簡単に目の前から奪われた。

俺自身の栄光すらー


男は燃え盛る城の中、落ち着いた足取りでヨハンの前に現れた。

彼は手にした黒い剣をヨハンの腹に突き刺した。

一瞬のことで何が起こったのか全く理解できなかった。

目の前が真っ暗になった。

身体の内側から燃え盛るような、爆発しそうな痛みが絶え間無く襲ってきた。

のたうちまわりながら痛みに絶え気がついた時にはもうー







崩れた城の中で自分が座した玉座にいたのはあの男だった。

男は聖剣エクスカリバーを手に自分を見下ろしていた。


「この剣は私を選んだようです。

試しに…今のあなたが持ってみるといい」


男は手にした聖剣をヨハンのもとへ投げた。

ヨハンが聖剣を手に取ると焼けるような痛みがヨハンを襲った。

激痛に思わずヨハンは聖剣から手を離した。


「聖剣はあなたを見限ったようです。

当然でしょう…あなたはもう勇者ではないのですから。」


男から感じるオーラは先刻までヨハン自身が纏っていた勇者のオーラだった。


「今のあなたに精霊の声が聞こえますか?

聞こえないでしょう。意識を集中してみてください、あなたの中に聞こえるのはー」


ヨハンの内に宿るのは絶えぬ怨嗟の声、禍々しい叫びだった。視界がぐにゃりと揺らぐ。

いや視界だけでなく意識も揺らいでいた。

意識がはっきりしなくなればなるほど、自分に宿ったものの声は大きくなっていった。


ー殺シテヤルー


その声だけがヨハンの頭の中に響く。

そしてそれがあの魔王討伐で倒した魔物たちのものだとヨハンは気づいた。


再びヨハンが意識を取り戻すと目の前にはもう誰もいなかった。

だがそこにいないはずのあの男が、確かに自分に言った言葉が今でもしっかりと脳裏に焼き付いている。


「勇者の血は私が頂いた。あなたに流れるのは忌々しい魔族の血。その身体ではあなたは正気を保てないでしょう。

ですが心配することはないのです、あなたにはこれを授けましょう」


ヨハンを突き刺した剣、魔剣ダーインスレイブ。

この剣を手にすると不思議と気分が落ち着いた。

だが魔剣から聞こえた声にヨハンは狼狽した。


ー命ヲ 命ヲ食ラウノダー


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