決戦前夜4
「あの高名な勇者の手伝いをしてくれませんかー⁉︎って私とペンさんで頼んだんですよ!」
隣の部屋からマッサージが終わったのかグリージャが戻ってきた。
「ヨハンさんの名前を出しただけで協力してくれた人もいるし、ちょっと強引な手で仲間に引き込んだ人もいるけどねー」
純粋な中に少しばかりの狂気を含んだ笑いでグリージャが言う。
やや困った感じでペンドルトンが微笑む。
「そうそう二重スパイをしてるやつとかもちゃんとあぶり出したんですよ!
それに仲間に引き込んだのは全部違うパーティの人達ですし。」
「仲間に引き込んだ奴がいるパーティ内に他のパーティの仲間がいるかも調べ上げたのか…前準備としては素晴らしい出来だな2人共。」
ヨハンはペンドルトンとグリージャの行動に関心した。
ただ漫然と戦いに参加するだけではない。
確実な勝利を見据えた上での参加なのだ。
「対戦の順番、組み合わせは明日にならなければわかりません。
ですからそれ以外の準備を進めていけばよいのです。
何よりヨハン殿には勝っていただかなくては。
あの男を倒してエクスカリバーを取り戻し、真の勇者とは何たるかを示すためにも。」
ヨハンの表情が引き締まる。
彼が今手にしている剣はエクスカリバーではない。彼には今聖なる力は宿っていない。
全て奪われたのだ、あの男に。
「力を、友を、国を、妃を…
全てを奪ったあいつを倒すまで俺は死ねない。
たとえこの忌々しい魔剣ダーインスレイブに命を削られようとも。奴に注がれた魔族の血が俺の勇者の肉体と拒絶反応を起こしても…」
ペンドルトンはじっとヨハンを見据えていた。魔剣ダーインスレイブのことも。
「我々の順番はヨハン殿、私ペンドルトン、グリージャ殿の順番でいきましょう。
今のところ偵察も侵入者の気配もない。
今日はもう休みましょう、明日に備えて」
グリージャはあくびをして部屋に戻っていった。
「ヨハン殿、あまり無理はなさらないように。
それと…」
「何だペンドルトン」
「その魔剣はあまり使わない方がよろしいかと。
グリージャ殿に代替品は用意してもらってますゆえ、何卒ご留意くだされ、では」