決戦前夜3
「簡単なことだ。先手必勝、2勝すればいいだけのこと。
この戦いに参加している勇者達のパーティ構成は8割方、勇者(もしくは剣士、騎士)、魔術師、戦士(あるいは格闘家、武闘家)のスタンダードパーティだ。それ以外の例外的な構成のパーティについては考察する必要はない。」
ヨハンは果実酒の味が気に入ったのかもう一杯口に含んだ。
夜風が優しく部屋の中に入り込む。隣の部屋からのアロマの香りと外の匂いが混じった香りが漂う。
「先手は恐らくほとんどのパーティが勇者を出して来るだろう。
なぜなら先手が勇者か、あるいはそれ以外でも勇者であれば安定して対処できる。勇者は能力別で見ればパーティの中で最も高い場合が多いからだ。
物理耐性、魔法耐性で見ても明らかなこと。対戦中の交代権は重要だ。生死が問われない以上、交代権をなくすことはそのまま死に直結する。」
ペンドルトンはじっとヨハンの話を聞いていたが、果実酒を飲んだ後、
「これしきの戦略はヨハン殿には少々簡単すぎましたかな?」
飲み干したグラスをテーブルに置いてやや大げさに喜びの感情を露わにした。
「いや全くその通り‼︎
生死を問わない戦いにおいて生き残って負けるというのは考えられない。いや、考えてはいけない!そのような甘い考えではこれからの戦いに勝ち残るのは不可能!
それ以前に…既に私の方で手は打ってありますゆえ、ご心配なきよう」
ペンドルトンは懐から写真を何枚か取り出すとテーブルの上に置いた。
その写真には魔王討伐に参加した勇者たちが写っていた。
「これは…ペンドルトン、まさか」
「さすがヨハン殿、察しがよろしいようで…
実はこの写真よりももっと人数はいるのですがな」
「そうか、買収か」
「その通り‼︎
既に魔王討伐などで我らの手の内は知られています。それが著名な勇者ともなればそれはさらに明らか!
対策が知られているならば戦闘は不利になるのは明白なのです。」
「そこで買収か。
戦闘での無駄な労力を減らす。それだけにとどまらず手の内をさらけ出すこともない。」
「さらにさらにヨハン殿、対戦相手が他の勢力に買収されている場合はこちらの情報がこれからの対戦相手に筒抜けになるのです。
残念ながら私たちの勢力以外にも同じことを考えている輩は当然いるでしょう。
グリージャ殿にも協力していただいたおかげで約20名ほどの買収に成功致しました。」