決戦前夜2
「明日…遂にこの勇者達が雌雄を決する。
神聖なコロッセオでどれだけの者が生き残れるだろうか」
「勇者機関からの使いが来ましたぞヨハン殿、明日の戦いはコロッセオでのパーティ同士の対戦。一対一の戦いですな。」
ペンドルトンは勇者機関からの文書を読んでいる。
勇者機関からの使いは白く小さなドラゴンだった。
羽根をパタパタと振り、可愛らしい鳴き声をしている。
背中に勇者機関からの文書を背負っており、
それをドラゴンの背中から取り、ペンドルトンは読んでいるのだ。
ヨハン達はフィンガルトの中央区にある豪華な宿に宿泊していた。
明日行われる戦いを見越してペンドルトンが予約したのだったが、随分贅沢なことをするものだとヨハンは内心思っていた。
「戦いに備えて万全を期すのは重要ですぞヨハン殿。何よりかつての勇者殿にみすぼらしい思いをさせるわけにはいきませぬ。」
とペンドルトンは言っていたが部屋のテーブルの上にある高級な果実酒や豪勢な食事、至れり尽くせりなサービスを見るに、恐らくペンドルトン個人の趣味であろう。
グリージャは宿のサービスであるマッサージを隣の部屋でしてもらっている。
微かにアロマの香りが漂ってくる。
悠長なことをしているがヨハンとペンドルトンによる結界が周囲に張り巡らされており、侵入してくる者や偵察へ来る者への対策は万全だった。
「コロッセオでの一対一の対戦か…他にルールの記載はないのか?」
ヨハンが尋ねるとペンドルトンは果実酒を一口飲みながら文書に目をやった。
使いのドラゴンは窓から外へ飛んで行った。
「うーむ…想像していたよりも単純なルールですなあ」
文書に記載されていたコロッセオでのルールは以下の通りだった。
一、勇者たる者持てる力の限りを尽くし戦うこと。
二、一対一での戦いである。相手の生死は問わない。
三、対戦中一回に限り、控えと交代可能。
四、3戦のうち2勝以上で勝利となる。
五、審判への抗議、攻撃等の行為は不当とみなし処罰の対象もなる。
「気味が悪いほど単純なルールだがわかりやすくていいな。」
「ヨハン殿、対戦の順番や作戦はいかがいたしましょう?」
ペンドルトンはややヨハンを試すかのような物言いで尋ねた。
ヨハンはテーブルの上の果実酒をグラスに注ぎ一口飲んだ。
一息ついたのちヨハンは言った。