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勇者たちの鎮魂歌  作者: 砂場遊美
第1章英雄編
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聖騎士の矜恃2

1年ほど前チェスターは聖騎士団のメンバーとして魔王討伐に参加していた。


トレミアには魔物の脅威が迫っていなかったが世界中には魔物や魔族が蔓延り、人間たちに分が悪い展開となっていた。

前哨戦として亜人種デミヒューマンが勝利をあげたのをいいことに、敵を完全に軽視していたことが裏目に出たからだった。


そんな窮地で勇者機関は長い間確執があった教会側に協力を申し出た。

聖騎士はその名の通り聖属性の力を持っており、魔物に対して有利だった。

だが教会側も上層部は勇者機関への協力を嫌がり、派遣されたのは若手がほとんどだった。


当主の跡取りと目されていたチェスターにも当然白羽の矢が立ち、聖騎士団が急遽結成され、魔王討伐へと参加を余儀無くされた。


チェスター達は魔物の殲滅と人間の救出を主に任され、3ヶ月近くも戦い続けた。

彼らのおかげで窮地から救い出された者も多かっただけにチェスターへの当主の期待はこの時から揺るぎないものになっていた。


だが…当の本人は既に次期当主へのプレッシャーで随分と前から押しつぶされそうになっていたのだ。

彼はそんな感情を決して表に出すことはなかったが、心の中では負の感情が渦巻いていた。



十字架に祈りを込めても彼の当主になりたくないという願いは叶わなかった。

チェスターは扉の前で何度も何度も逃げ出したくなった。

目の前の扉はまるで大きな魔物の口のように見える。

しばらく考えた後、彼は体の前で小さく十字を切り、扉を開けた。




大広間では次期当主のお披露目を見ようと大勢の人がいた。チェスターが広間に姿を見せるともともとざわついていた群衆はさらにざわめきはじめ、その視線をいっせいにチェスターに向ける。

彼らの視線は当主への期待や、まだ若い者に当主を任せるゴドフロアへの不信、チェスターを評価しようとするなど様々な感情が込められているように思えた。


チェスターは内面の負の感情を押し殺し、凛々しい顔つきで、広間の壇上へと登った。

ざわついていた群衆が一瞬にして静まり返る。

チェスターは一息ついたあと群衆へ向けて話し始めた。


「皆、今日は集まってくれて大変ありがたく思う。

私は今日この日より偉大なるゴドフロアの名を9世たる父より賜る。」


一呼吸置いてさらに続ける。


「今、教会は危機に直面している。存続の危機だ。

世界は祈りによる神からの祝福や救済ではなく、自分の力や精霊から受けた借り物の力を使い救済を求めている。それが勇者機関の作る世界だ。」


群衆はチェスターの話に聞き入っている。






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