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勇者たちの鎮魂歌  作者: 砂場遊美
第1章英雄編
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竜人は羽ばたく4

翌日から412号たちの作戦が始まった。

奴隷たちは作戦に概ね了承してくれたが、当日16区から離れた区画で作業する奴隷たちは最後まで難色を示していた。

最終的には酒やタバコをいくらか譲渡するということでなんとか落ち着いた。


359号の提案した竜人の悪評を流す作戦だが、これもまた恐ろしいほど順調に進んだ。

恐らく人間たちも竜人に対して不満が溜まっていたのだろう。

竜人は3日もしないうちに現場作業へと駆り出されてきた。


「身に覚えのない噂を流したのはてめえらか、いったい何のつもりだ⁉︎」


竜人は激怒していて、近寄りがたい雰囲気を出していたが、412号と359号が理由を話すと幾分か落ち着いた。


「なるほど…確かにお前らの作戦は素晴らしいな。他の区画の奴らが逃げるまで多少の増援程度なら俺一人で足止めできる。

偽の噂で人間共に散々殴られたのは許せねえがな。」


竜人が凄んだ様子で359号を睨む。流石は最強の生物ドラゴンの血を引くだけのことはある。

生物としての本能なのか359号は畏怖の念を竜人に抱いていた。


がっしりとした体躯に紅い髪。肌は浅黒く、目はドラゴンを思わせる鋭い眼光を放っており、素肌からはウロコのようなものが見える。

額には目立ちはしないが角のようなものも生えていた。


「すまなかった、許してくれ。今回は事が事なだけにしょうがなかったんだ。

どうしてもあんたの力が必要だったんだよ。」


気まずい沈黙が流れる。

412号と81号は固唾を飲んで成り行きを見守っていた。

359号は蛇に睨まれた蛙のごとく、動くことができずにいた。

しかし竜人も彼らの気持ちがわからないわけではない。

少し冷静になり作戦に加わることとなった。


「そこのワーウルフが言うように俺は人間の身辺警護をしていた。だから外の様子もお前らよりわかる。

おまけに扱いはここよりずっと良かったから余力もある。

他のやつらの体力を考えると実行は早い方がいいだろう。

しかも最近人間たちの数が少なくなってきている。正直あいつらも、このクソ暑い中俺たちの見張りなどしたくないんだろうな。」


竜人の話を聞き他の奴隷とも連携を取り、作戦の決行は明後日となった。


作戦決行前夜、休憩所である洞窟全体の空気は張り詰めていた。


412号は洞窟の入口で月を見上げていた。


「父さん、母さん、姉さん…見守っていてくれ…俺は必ず未来を勝ち取る…!」



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