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勇者たちの鎮魂歌  作者: 砂場遊美
第4章七日間戦争編
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2日目5

「な、何を仰っているのです…?」


「だってそうでしょ!?そもそもなんで違うパーティのあなたがいるの?

それはあの女と同じパーティで竜人を手中にしたいから!そうなんでしょ!?」


セミラミスも取り乱して最早事態は収拾できなくなった。どちらにせよ、グリージャはあの隠れ家で

既に竜人と契約ー契約と言っても、彼女の言うことには逆らえないような服従のようなものだろうがー

を結んでいるのだろう。

先ほどからジェームズはもう機能していない。目をギョロギョロさせて視線は定まらず、右手で左手を押さえている。この空間ではもう彼は戦力にはカウントできない。


「あなた方の前で申し上げるのもおかしいことなのですが、自分がなぜこの場にいるのか私にもいまだわからないのです。」


思わず本音がこぼれる。だが事実だ。そしてペンドルトンの考えが正しいならこの作戦自体がグリージャのもう一つの作戦の隠れ蓑でしかない。そしてその狙いは恐らくー


「そんなのわかりきってることじゃない!あなたがあの女から指示を受けて私たちを誘導する役目なんだから!あなたが退却すると言えば私たちは従うしかない。戦力で教会の戦士には到底かなわないことをわかりきってて…卑劣な魔術師!!」


「罵倒は退却してからいくらでもお聞きします!まずは退却を!」


この異空間で敵に見つかれば一巻の終わりだ。だがグリージャはなんと退却用の魔法陣まで用意していた。

本来ならば敵の作りだした空間から脱出するには空間を作り出した本人を倒さなければならない。

それをせずに脱出するなど都合が良すぎる気はするが、グリージャはそれができるだけの実力があるのだろう。今までの彼女の言動から考えても嘘をついているとは思えなかった。


「嫌‼︎あんなものを見せて、引き下がれって言うの⁉︎」


「ですから、戦力をもう一度整えてから出直すと申し上げているのです‼︎」


魔法陣はこの空間に侵入してきた通路に佇み、鈍い光を放っていた。

急がなければ既に動きが察知されているだろう、猶予はあまりない。


しばらく不毛な言い争いを続けた後、沈黙が訪れた。

だがその沈黙で気がついた。

何かを引きずるような音がする。自分達がいる通路の奥から。それはゆっくりと自分たちの方へと近づいてきている。

引きずる音から察するにそれは鉄や金属の類いだろう。ガリガリという不快な音は徐々にその音を大きくしている。

奥が見えない通路に眼をこらすと、その音の正体がわかった。


エルフのセミラミスは人間よりも遥かに目が良い。

その音の方をしばらく見つめたかと思うと、口を手で押さえた。その表情は驚きとそして嬉しさでいっぱいのようだった。

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