表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者たちの鎮魂歌  作者: 砂場遊美
第4章七日間戦争編
189/209

2日目2

教会の戦士が作り出した別空間。

まるで城のような造りの廊下にウルフ救出メンバーは降り立った。

手で廊下の壁を触ると普通の壁となんら変わりない、まるで本物のようだった。

廊下は横幅もそれなりに広かったが、何より前方にかなり長く延びている。先が見えないほどだ。

ペンドルトンはグリージャから聞いた言葉を思い出す。


ー別空間に入ったらまず敵側に感知されてしまう、これだけは覚えておいて。そもそも敵が作った空間だからね。ー


「お二方、参りましょう。」


ーどこの部屋に狼男がいるか正確な場所はわからない。だけど捕まっているのは亜人種。匂いでの感知は充分可能なはず。


「ウルフ、待っててね。」


ー部屋には恐らく防衛用のトラップが仕掛けてあると思うから気をつけてね。それに教会の戦士との鉢合わせの危険ももちろん忘れずに。今の3人じゃ多分あの3人の誰にも勝てないと思うから。それとー


「………」


ー映像でわかったと思うけど、生きてるのは狼男だけ。親指なしのパーティはもう死んじゃってる。ー


「何も無いのがかえって恐ろしい場所ですね。」


ペンドルトンは呟いた。誰に話しかけたわけでもないが、話さないと言いようのない不安に押しつぶされそうだったからだ。

ここは既に敵地。周囲に常に気を配らなければ救出はおろか、自分達の命ですら危うい。

そんな極限状態の中に今ペンドルトン達はいるのだ。


教会の戦士は資料で確認した限り、3人が3人共、かなりの強敵である。

一方のこちらはその教会の戦士に一度負けた戦士、黒魔術師、エルフの3人である。

戦力的に考えればエルフのセミラミスが一番の要だが、彼女は先程の映像でやや戦意を失いつつあった。


確かに狼男を助けたい気持ちはある。だがもし救出に失敗し、自分も同じ目に遭うとするならば?と考えると正直恐怖にかられるのも無理はない。

そして最大の戦力竜人をあえて救出メンバーから外すグリージャの底意地の悪さ。

恐らくはなからウルフを救出し、全員が生き残るとは考えてないのだろう。

最初から竜人を手にするための作戦。ウルフ救出はそのための餌なのだ。

だがペンドルトンは覚悟を決め突き進む。


「この扉の向こうから、微かに気配を感じる。」


セミラミスが長く伸びる廊下を15メートルほど進んだ辺りの扉の前で止まった。

何の変哲もない扉。だがその向こうには何があるかわからない。

魔窟の入口のごとく扉が構えていた。


「魔術師殿の…言う通りなら…生体反応のある場所をしらみつぶしで探すしかない…。」


ジェームズは口調が変わっただけでなく、挙動も落ち着かない。一度植え付けられた拷問の恐怖はすぐには拭えないだろう。目も泳いでおり、そわそわしている。

声も上ずったような掠れたような声で威厳もなくなっていた。


だがそれでも彼はここに来た。恐怖に抗いながら。新たな仲間を助けに。そして変わり果てたかつての仲間の亡骸だけでも、せめて持ち帰ろうと。


3人は目線を合わせる。ペンドルトンが先行し、2人は後ろで控える。取っ手に手をかけ、ゆっくりと開けようとした。


「………開きませんな。」


鍵がかかっているのだろうか、扉はびくともしない。それとも教会の戦士しか開けられないようにセキュリティがかけられているのか。扉は開かなかった。


「まさか扉は全て鍵がかけられているなんてことないわよね?」


「ありえない話ではありませんね。もしそうならこじ開ける他道はありません。」


この扉は一旦保留し、更に廊下を進もうとした時、ジェームズが扉に違和感を感じた。

恐る恐る扉に近づき、確認する。


「魔術師殿…この扉…」


「どうかしましたか?ジェームズ殿。」


ジェームズは怯えた表情でペンドルトンの方を向く。


「向こうから…扉を何かが開けようとしている…」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ