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勇者たちの鎮魂歌  作者: 砂場遊美
第4章七日間戦争編
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異空間での戦い5

「マンユ…次は簡単に消えないでいただきたい。」


『どうやら敵に致命傷を与えたようですな。』


「それはあのエルフですか?」


『いえ、剣士です。』


「⁉︎馬鹿な?」


ペンドルトンは焦っていた。使い魔の召喚に魔力を使いすぎていることに。使い魔は所詮召喚者ではなく、魔力に従っているだけで、それがなくなると途端に掌を返したように裏切る。

魔力の消耗を激しくして使い魔をもう一度呼び出し、エルフに奇襲をかけたはずが失敗してしまったのだ。

案の定マンユは剣士に致命傷を与えたものの、エルフとの対峙を余儀なくされている。


「ジェームズ‼︎」


セミラミスをかばい、その身体に矢の一撃を受けたジェームズは地面に倒れた。


『貴様、余計な真似を…。』


セミラミスは使い魔の顔に向かい魔法の攻撃を放つ。使い魔は攻撃を避け、彼らと距離を置いた。

だがセミラミスがジェームズを回復しようとした隙を狙い、再び接近する。


「くっ、回復に集中できない…!」


『雑魚を庇いながらとは不憫だな。』


セミラミスは魔法による攻撃を使い魔に何発も放ったが、一向に当たる気配がない。

使い魔は華麗に攻撃を避けながら、彼らを威嚇している。

セミラミスはジェームズを回復しなければならないが、かと言って使い魔の攻撃を避けなければ集中もできない。

圧倒的に不利な状況になってしまった。さらに竜人もアーサーに押されるように敵陣へと入り込んでしまっていた。


「マンユにはあの調子でエルフを牽制していただきましょう。」


『時に主よ。』


「何です?アンラ。」


『先程と比べると魔力が少々弱っているのではないか?

もう少し強めの魔力を所望する。でなければ一旦我々を戻すことだな。お前の命が危ういぞ。』


ペンドルトンにとってまずいことになった。短期決戦で決めるつもりが、あろうことか泥仕合になっている。

このままではこちらの魔力が切れ、敵よりもこの使い魔に狙われてしまう。


「グリージャ殿、頼みがあります。魔女の生き血を下され!あのアイテムがあれば魔力を補充できます。さすれば、今の有利な状況を維持できるのです!」


だが彼女の返事はない。

ふと振り返り、彼は自陣の状況が飲み込めた。ヨハンが竜人と共にこちら側へ向かってきている。

ヨハンの剣から放たれる魔力と、竜人の炎の衝突は範囲が広く巻き込まれる危険があった。この場から移動しなくてはいけない。

だがグリージャは?


気がつくと彼女はペンドルトンから離れ、ヨハンへと加勢している。恐らく龍血晶を竜人に使い、再び捕らえようとしているのだろう。だが今の彼女は加勢するどころか、2人の攻撃に巻き込まれないようにするので精一杯だ。

だがそれはペンドルトンとて例外ではない。

ヨハンの魔力は抑えきれていない。その魔力を浴びればただでは済まないだろう。


じりじりとペンドルトンは移動を開始する。

意識はしていないが、彼はセミラミス達へと徐々に近づいて行っている。

ヨハン達の動向と、戦況のことで頭が一杯なのだ。


そしてこの時ペンドルトンは決断を迫られていた。魔力の補充は絶望的で、自陣には竜人がなだれ込んでいる。

魔力が切れるまで使い魔でエルフを牽制するか、それとも使い魔を消し、少ない魔力でヨハンに加勢し、竜人を捕縛するか。

時間の猶予はなかった。

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