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勇者たちの鎮魂歌  作者: 砂場遊美
第4章七日間戦争編
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異空間での戦い3

竜人はヨハンと対峙した瞬間、かつて味わった屈辱を思い出した。

それは3年前の魔王討伐で首都防衛を任された時、魔王の思念体とされる影と対峙した際、撤退を余儀なくされたことだった。

何故この期に及んでそれを思い出したのかは明白だった。


目の前に対峙するアーサー17世ヨハンからその影と同じ気配を感じ取ったからだ。

3年前、共にコキュートス侵攻作戦に参加し一時は仲間だったので、竜人にはヨハンの変化があまりに信じられなかった。

エクスカリバーを持ち、王としての風格も感じさせていた男が今では闇の力に魅入られている。


そのヨハンが使う闇の力こそまさしく3年前の魔王の力と同じだった。竜人はヨハンからの攻撃をうまくいなし、ヨハンに問いかける。

といっても相手の攻撃とて決して優しいものではない。何より闇の力を前に、本能的な恐怖が蘇る。竜人にとってもギリギリの行動だ。


「えらく様変りしたな、アーサー。」


アーサーの目からは王の風格はなく、ただ血に飢えた悪魔の瞳のような紅い輝きが鬼火のように灯る。その瞳を歪め、ただ竜人を見据えた。

幾度目かの剣撃をいなされた後、アーサーは距離を置いた。

手にした妖刀からはあの闇の力が溢れ出ている。


「お前には関係のないことだ。」


「おいおい、突っ込むなって方が無理だろ!聖なる力の代表みたいだったお前が、今や真逆の力に取り憑かれてる。

あれか?3年前の、魔王から聞かされた真実がそんなにショックだったのか⁉︎」


しばらくアーサーは問い掛けには応えず沈黙を貫いた。竜人は出方を伺っていたが、やがてアーサーが口を開いた。


「俺は…奴に奪われた。」


「……は?」


アーサーの一際重い剣撃が竜人に襲いかかる。ドラゴンのウロコでさえ、竜殺しの効果を持たないあの妖刀で持ちこたえるのが難しいほどの重さ。

見たこともない力だった。そして今のアーサーからは怖気がする程の負の感情が感じ取れた。


「俺は奴に全てを奪われた。民を、妃を、国を、名誉を、そして聖剣も。」


「全部取られたのか⁉︎あの完全無欠のお前がか⁉︎それでそんなものに頼っているとは。情けねえな!」


「奴はこの戦いに参加している。唯一あの時奪えなかった俺の命を奪い、絶つために。」


ヨハンの妖刀に宿る黒い焔が激しく燃え盛る。渾身の突きが竜人目掛けて放たれる。


「そいつは誰だ⁉︎」


竜人は空へ飛び攻撃を回避。アーサーの背後へ回り込む。

まだ話を聞きたいらしい。


「言っただろう、お前には関係ないと。」


「恥ずかしくて言えないのか!だからあんな胡散臭い連中とパーティを組んで、こそこそと戦いに参加しているんだろ⁉︎」


「奴は聖剣だけでなく、かつての俺の力も持っている。勇者の血だ。

奪われた勇者の血の代わりに、俺の体に流れているのは、忌々しい魔族の血だ…!」


「お前ほどの力を持つ者を、国を、そいつは1人で全て奪ったのか⁉︎

信じられねえな!俺はいまいちお前がアーサーだと信じられねえ!」


アーサーの脳裏にあの光景が蘇る。

魔剣。燃え盛る城。民の絶叫。跪く王。奪われた聖剣。


ーその忌々しい血でもって私に会いに来るといい。ー


「奴は言った、会いに来いと。そうだ、俺はそれまで死ねない。この力に体が蝕まれようと、這ってでも奴を倒さなければならない。」


妖刀の魔力が膨れ上がる。アーサーの意思に呼応するように、それは凄まじい怒りの念を宿している。

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