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勇者たちの鎮魂歌  作者: 砂場遊美
第4章七日間戦争編
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まがいもの3

目の前に現れたのは亜人種のパーティーと思しき者たちだった。思しき、というのも竜人と同じ亜人種がいたからだ。

エルフ。人間よりも長命で高い魔力を持つ種族。長い耳とすらっとした体型で、鮮やかな金の髪をなびかせる。人里離れた森に住んでいたとされているが、数百年前にピサロ1世の亜人種弾圧でその数を大幅に減らした一族でもある。

人間とは一線を画す魔力量。その美しい姿と相まってその場にいたものは思わず息をのむ。


「竜人!」


「間に合ったか!」


グリージャは動けない。やはり魔法への耐性は低いようだ。クラスはアサシン、シーフ、グラップラーの3つをマスターしている。俊敏な動きで敵を翻弄するものの、魔法に対する弱さは否めない。

苦虫を噛み潰したような面持ちで目の前の者を睨む。相変わらず動きはできず、短刀を構えたまま動きを止めている。


エルフの横に立つのは戦士だ。見たところそこまでの実力者ではない。不思議なことに片方の親指がない。どこかで見た覚えがあるが思い出せない。見るにおそらくその戦士がかけた魔法でグリージャの動きを止めているようだ。


「セミラミス!それと…ん?」


「ははは、こんな形で再会するとは…因果だな。」


「ジェームズ!その水晶を引き抜いて今すぐ壊して!」


鬼のような形相で睨むグリージャの眼前で捉えた竜人が解放される。ヨハン、ペンドルトンはグリージャを抱え目の前の者たちに対して構えを取る。

龍血晶が完全に破壊され竜人が立ち上がった。

彼女が竜人を殺めるのを止めたものの、状況判断を誤ったかとヨハンもペンドルトンも考えた。まさかここまで早く、それもピンポイントで助けが来るとは思わなかったのだ。

形勢逆転。弱っていた竜人のオーラが徐々にその威圧感を取り戻していく。3対3。お互いの頭数は同じ。だが戦力差は圧倒的にヨハンたちが不利だった。


「ヨハン殿、これはまずいですな。」


「あーあ、あんたたちが止めなければこんなことにはならなかったのに。」


「見たところあの戦士は強くない。2対3だが…亜人種2人か。」


2つのパーティーが狭い室内で睨みあう。ここで戦えば間違いなくこの隠れ家は崩壊するだろう。それに休戦期間で派手な戦いを行えば、自分たちの居場所が知られる危険もある。それに…ペンドルトンはちらりとヨハンを見やる。

ペンドルトンの処方した薬も効果は一時的。戦えばまた暴走しないとも言い切れない。

それ以前に竜人と戦って生き残れるか。


「よくもなめた真似をしてくれたな。本当に死ぬかと思ったぜ。」


「大丈夫!?とにかく気を抜かないで!相手はあの勇者殺しよ!」


聞きなれぬ不穏な単語を聞き、ペンドルトンの頭にいくつか疑問が浮かぶ。

だがその前にとにかくここでの戦闘を止めなければならない。

前へ出ようとするペンドルトンだがヨハンが制し、前に出る。


「マーリン、すまない。お前にばかり責任を負わせない。」


「ヨハン殿…」


対峙するパーティーが臨戦態勢に入る。

明らかに魔力が跳ね上がる。竜人のものだろう。


「亜人種よ、私の仲間が手荒な真似をして申し訳ない!ここは一つ剣を収めてくれないか。」


竜人達は冷ややかな視線をヨハンたちに向ける。

確かに都合のいいことだ。こちらは相手を拘束し、殺そうとしたのだ。形成が逆転した途端、戦闘を中断。向こうが許すはずがない。


「休戦期間での戦いは危険すぎる!それにこんなところで戦えば双方無傷では済まない!それはあなたたちもおわかりではないのか!?」


「勇者殺しがいまさら何を言うか!!見損なったぞ、不義の元勇者!!」


勇者殺し。どうやら我々は勇者殺しという者になっているようだ。ペンドルトンは冷静に分析する。しかし戦闘は止められない。

だがその時グリージャが見たことのないアイテムを取りだした。

魔力の込められた札だ。見たことのない字で書かれているが、一体何だろうか。


「しょうがないな…また貸しが増えたねペンさん。強制召喚!!」


聞き慣れない呪文と共にその場にいた者たちが全員姿を消した。


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