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勇者たちの鎮魂歌  作者: 砂場遊美
第4章七日間戦争編
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竜人を探す5

満月を背にそれは降り立った。漆黒の剣を振りかざし、殺意を剥き出しにしている。


ただでさえ暗い夜、闇と同化する黒い刀身を男はひらりと躱す。

時折眼鏡を上げる動作をしながらあの不敵な笑みを浮かべていた。


「すごい…この暗さで、あの刀の間合いがわかるの?」


「オオオ…」


「ふむ…奇襲はうまいのだろうが、攻撃自体は単調だな。」


男が刀を躱す動作は淀みなく、そして落ち着いていた。

まるではじめからその物が何者かわかっているかのような動きで紙一重で攻撃をかわしていく。

だが啖呵を切ったにも関わらず、自分からは一切攻撃する素振りを見せなかった。


「あいつ…確かにかなりの手練れだが、なぜ攻撃をしない?」


「おっと…」


すると男は足元の小石に躓いてしまった。

一瞬の隙に刀が身体にめり込む。


「トラエタ…クラウ…」


刀で男は右肩から左脇腹にかけて斜めに両断された。

あれだけ余裕な様子だったがあっけない幕引きだった。


「一体何がしたかったんだ、あいつは?」


「観察、それに尽きるがね。」


男は何事もなかったかのように、ジェームズの背後から現れた。


「うわあ⁉︎いつの間に…」


自分が殺した者と目の前の者が同じという事態が受け入れられず、勇者殺しは漆黒の剣を背に掲げ撤退した。


「やれやれ、危ないところだった。」


「お前…魔術師の類だな。」


「………そうだが、それが何か?」


「普通魔術師は近接戦に自分から持ち込むような真似はしない。それにあの切られた身体は確かに本物だ。幻術でも催眠術でもない。」


「………」


「何者だ?お前…」


「聞けばすぐに答えが返ってくる。その考えは甘いんじゃあないのかね?」


男は挑発的にジェームズを見る。頭を自分の人差し指でトントンとつつきながら。


「そこのお嬢さんはさっきから酷い目で私を見るね。」


セミラミスは口を手で押さえながら、頭を左右に振っている。ひどく怖がっているようだ。


「今大事なのは私ではない。あれが一体何なのか、ということだ。」


「怪しまれたくないならあんなことするんじゃなかったな。」


「ほう、言うじゃないか。」


「俺達はあんなのにかまっている暇はないんだ。やらなければならないことがある。行こう、セミラミス。こいつといると気分が悪くなる。」


「竜人と狼男を探しているのかね?」


2人が驚愕の眼差しで男を見る。


「お前…何故それを…!」


「何故か…うむ、人間の根元的な感情である。ククク、素晴らしい。」


「なんなんだお前は…」


「私はこう見えてつてがあってね。情報通なのだよ。」


「竜人の、居場所を知っているの?」


セミラミスが恐る恐る尋ねる。


「実は私のパーティーもあの男に殺されてね。仇を取りたいんだが、私はあいにく戦闘向きではない。あいつに関する情報を集めたはいいが…どうしていいか困っていたんだ。」


「それはお気の毒だ。だがそれと竜人、何の関係がある?」


「あの男の正体はアーサー17世ヨハンだ。」


「⁉︎何だと?それは本当か⁉︎」


「嘘…嘘よ…ありえないわ!」


「アーサーは奪われた聖剣を取り返すためこの戦いに参加している。そして、そのために悪魔と契約したのさ。あの忌まわしい魔剣とね。」


男は尚も続ける。


「その魔剣は恐ろしいものでね。強者を次々と殺して、自分の力に変えていくのだ。そして竜人はその魔剣の標的となった。」


「まさか…そんな…」


「お仲間を捕らえ、そして私のパーティーを殺した憎き男、かつての勇者アーサーが竜人を始め、魔剣への生贄を求めて勇者を狩っている。」


「やはり、そうだったのか。」


男はふっと少しばかり柔らかい表情でジェームズを諭した。


「どうかね?ここは一つ協力しようじゃないか。私は奴の隠れ家の場所を突き止めはしたが…1人では到底叶わない。

そこでだ!」


一息おいて男は続けた。


「私とパーティーを組もうじゃないか。申し遅れた私はクレタ。黒魔術師だ。」

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