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勇者たちの鎮魂歌  作者: 砂場遊美
第4章七日間戦争編
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竜人を探す4

「くそっ…まさか本当に遭遇するとは…!」


不意打ちとも取れる突然の出現、それも屋内に現れたことで2人は最初何が起きたか理解できなかった。


だがそこは歴戦の勇者とエルフ。ジェームズの重力魔法で動きを止め、逆に自分達の身体を軽くして一目散に隠れ家から逃げた。

今彼らは隠れ家から2キロほど離れた自然公園の中にいる。

辺りは開けており隠れることはできないが、先程の魔法が効いたところを見るに、重力魔法で充分撹乱できると踏んだのだろう。


狭いところや袋小路に下手に隠れるよりも、自由に動けることがアドバンテージとなる分、見晴らしのいい場所を選んだというところか。


「あなた…コロッセオですぐに負けたから大したことないと思っていたけど…やるのね。」


「ははは…エルフさんは手厳しいな。でも僕の魔力は君とは比べものにならないほど低い。それが簡単に効くということはどういうことなんだ?」


「それって…さっき言おうとしてたあいつの正体候補と関係があるってことよね。」


目まぐるしく状況が変わり、酷く危機的な状況にも関わらず2人は落ち着いて行動ができた。だからこそ生き延びることができたのかもしれない。


既に深夜。日中は憩いの場となる自然公園。空には満月が浮かび、淡く闇夜を照らす。

人影は彼ら以外あるはずもなく、日中の喧騒との対比で酷く不気味に感じられる。

だが温暖な気候の首都、夜は少しひんやりとしてはいるが、散歩にもってこいの気候だ。


「ああ、まず1人候補から外れた奴がいる。」


「それは誰なの?」


「アーサー17世ヨハン。聞いたことくらいあるだろ?3年前の魔王討伐で活躍した生ける伝説。勇者の中の勇者。」


セミラミスは一瞬思考を巡らせると怪訝な顔付きでジェームズを見た。


「ええ知ってる。けど、あれがアーサー?候補から外れたんでしょうけど、あれをアーサーだと勘違いしていたわけ?」


「君の知っているアーサーは3年前の姿だろう。確かにあの姿からは勇者という言葉は程遠い。」


「………何があったの?」


「俺も詳しくはわからない。人づてで聞いた話だ。なんでも部下の謀反にあい、聖剣エクスカリバーを奪われたらしい。それが3年前の魔王討伐の少し後。そこからは行方が知れず、今になって姿を表した。」


「それであんな風貌に?」


ジェームズはぎこちなく首を縦に振る。


「本当にとんでもない話だよ。魔王が倒れたと思ったら…今回の戦いの前から噂にはなっていたんだ。ただ、聖剣がないとはいえ、あそこまで魔法の耐性がないとはね。アーサーの話も事実かどうか怪しいところだな。」


「あれが元勇者だなんて信じられない!あの雰囲気や風貌は魔人そのものよ。それに実際に会ってみてわかったわ、あれはまず人間でもない。」


「どういうことだ?」


「あいつは死者よ。間違いないわ。私はそういうのがわかるの。」


「おいおい冗談だろ?仮にも神聖な首都で、なんであんな危険な死者がうろついてるんだ?確かにエルフはそのあたり人間より詳しいんだろうが…信じられんぞ。」


「私…どうにも頭の中で引っかかっているんだけど…この戦いっていろいろおかしいことがありすぎる気がするの。」


「確かに…まあトラブル続きではあるけど。」


その時近くで咆哮が聞こえた。勇者殺しが近くまで来ているのだ。


「俺達を追いかけて来たのか⁉︎セミラミス、また俺の魔法で撹乱する!今度は奇襲の手は喰らわない。君にも協力して欲しい。」


「ええ、任せて。」


「ククク…亜人種とは…本当にこの戦いは珍しいものばかりだな。」


「誰だ⁉︎」


2人が声の方を向くと、ひどく不健康そうな、眼鏡をかけた男が立っていた。


「私は先程からここにいたのだがねえ、どうにも存在感がなくて困る。」


「……!あなた…」


「大丈夫だ、怖がらなくていい。私は君たちの味方さ。」


「真面目そうな見た目で洒落を言えるんだな。味方じゃありません、て面構えだぞお前。」


「見た目で誤解されるのは慣れっこでね。じゃあこれから証明して見せよう。巷を騒がせる勇者殺し。私はその正体を知っている。」


「⁉︎」


男は不敵な笑みを浮かべると、2人の前方に立った。

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