表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者たちの鎮魂歌  作者: 砂場遊美
第4章七日間戦争編
165/209

竜人を探す3

ジェームズとセミラミスが隠れ家に戻り、ウルフがいなくなったことに気づいたのは、それからすぐのことだった。


時刻は正午過ぎ。

悪目立ちするために捜索に参加させていない腹いせに外に出たか、あるいは居ても立っても居られなくなり、捜索に出たかと2人はたかをくくっていた。だがそれから夕方になっても一向に戻る気配はなく、やがて外は完全に暗くなった。

夜になり2人はウルフが失踪したと考えることになる。


「恐らくウルフは竜人の捜索に出て、敵に捕まったのだろう。」


ジェームズが呟く。今まで考えてはいたが、あって欲しくないと願っていたことが現実味を帯びてくる。

実際に口に出すことは相当な勇気が必要だ。

セミラミスがはっとしたようにジェームズの方を向く。


「そんな…竜人だけじゃなくウルフまでいなくなるなんて…」


亜人種の友である彼らとは、キングピサロからもう1年以上共に旅をしてきただけに今や仲間意識は相当なものになっている。

元々奴隷で自由もなかった彼女がここまで再起できたのは、竜人達のおかげと言ってもいい。

まさかこの戦いではぐれるとは思ってもいなかった。それだけにダメージはかなり大きく深い。


「今からでも外に行きましょう!まだ失踪したと決まったわけじゃない!」


セミラミスが珍しく語気を荒げる。


「駄目だ。」


あまりにきっぱり言い切られたため、セミラミスはジェームズに疑いの目を向ける。


「どうして?やっぱりヒトの目から見て…私達は信用できないの?」


気が動転しているのか論点もずれている。ジェームズは一息つくとセミラミスに話し始めた。


「いいかセミラミス、一旦落ち着こう。俺は君たちに救ってもらった。だから竜人やウルフのことをとても心配している。」


「……本当に?」



「ああ本当だ。だからこそ慎重な行動が必要なんだ。ウルフは竜人をコロッセオに置いてきたことに引け目を感じていた。なのに捜索に参加させず、半ば閉じ込めるような形で隠れ家に匿っていたことになる。」


「それで焦って外に出て…誰かに捕まったってこと?」


「その可能性が高い。まだどこの誰かに捕まったかはわからないが…ウルフは亜人種だ。単純な腕っ節なら並の者では勝てないだろう。」


「そこから先はあまり考えたくないわ。」


「………この戦いに参加している勇者のごく一部はかなりの強敵だろう。ただこうも考えられる。不意打ちを受けたか、あるいは騙されたか。それならウルフだって捕まる可能性は高いだろう?」


「つまり…捕まっているなら、単純な強敵ではなく、策を弄するような輩に捕まったってこと?」


「ああ。それともう一つ。今日も話したが、昨晩の勇者殺しの件だ。ウルフにはまだ話していなかったのが若干痛いが…今から我々が捜索に出るとその勇者殺しに遭遇するかもしれない。」


勇者殺しと聞いてセミラミスの顔が強張る。


「その勇者殺し…正体はわからないの?」


「………断定はできない。」


「候補はいくらかいるってこと?」


「……まあね。」


「教えて。敵を知ることは重要よ。勇者殺しの正体が少しでもわかれば対策が練れるわ。」


「ここで話すのはあくまで推測の域だ。それと一つ約束してほしい、竜人やウルフの捜索は明日以降だ。昨日の件は危険すぎる。機関がまだ公にしていないことを見ると黙認している線も考えられるからね。」


「わかった。」


「まず黒い剣を持っている戦士、そいつは…」


目の前にいた。その黒い剣を持った、フードを被り、闇のオーラを纏った男がまさに2人の目の前に現れた。

気配を感じさせず、突如そこに出現したのだ。

思考が一瞬止まる。その僅かな隙はほんの一瞬だが、2人を絶望的な状況に陥れるのには充分な時間だった。

男は闇のオーラを発しながら低く唸り始め、背中から黒い剣を引き抜いた。


「ソノ…命…クライツクシテ…ヤル…」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ