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勇者たちの鎮魂歌  作者: 砂場遊美
第4章七日間戦争編
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竜人を探す

「それはそうだけどよ…」


ウルフはやりきれなかった。あの時コロッセオから逃げたのが未だに悔やまれる。


「君はあの時逃げたことを悔やんでいるのだろう。」


ジェームズが諭すように言う。


「……そうだ。昨日のことだがもうあの時ああすればこうなっていた、ってことしか考えられねえ。」


「意外とメンタルが弱いんだな。」


「なっ、何だと⁉︎」


「見た目は狼だが、中身は仔犬のそれだな。」


「てっ、てめえ…」


「あの時ああすればよかった…誰でも考えることだが、それほど後ろ向きな考えはない。何も生まない。君は満身創痍だった上に我々を抱えて安全を確保しなければならなかった。君は最善の道を選んだんだ。」


「……だが竜人は…あいつは…」


「今俺達で探している。心配するな。」


その時セミラミスが捜索を一段落終えて隠れ家に戻ってきた。


「戻ったわ。こっちもめぼしい情報はなし。」


報告だけ終えると、2人の雰囲気を察したのか、そのまま何も言わず奥の部屋へと入っていく。


「まあ、休戦期間はまだある。俺の仲間もまだ行方がわからない。じっくり探していくしかない。」


ウルフ達に助けられたことで竜人捜索に協力してくれてはいるが、ジェームズも仲間が消息不明になっている。あのコロッセオの暴動で散り散りになってしまったのだ。


「セミラミスも部屋に籠ってしまったぞ。男2人で辛気臭くなっているからだな。」


「俺も…俺も何か捜索に協力できることはないのか⁉︎俺はこの中で一番鼻が効く!なのにどうして捜索に参加させてもらえないんだ⁉︎」


ウルフが思わずこぼす。今は2人で捜索しているが、捜索は人手が多ければ多いほど効率がいい。それに鼻も効くウルフが捜索に加われば竜人の見つかる可能性も高くなる。

それを2人は悪目立ちするということで頑なに断り続けていた。

流石に本人にそのことを直接言えるわけがない。遠回しに断り続けていたのだ。

ジェームズは本人の前でそのようなことを言っていいかどうか考えていた。


沈黙が流れる。部屋の時計の秒針がやけに大きく聞こえる。

沈黙を破ったのはセミラミスだった。

部屋から出てきたかと思うと何か決心したかのような面持ちで2人を交互に見る。


「ジェームズ…ウルフにも話しましょう。」


セミラミスが思い口を開いた。


「…いいのか?」


またもや2人だけで話が進んでいることに納得がいかないウルフだったが、2人の表情を見て只事ではないと悟ったようだ。


「理由があるなら聞かせてくれよ。このまま仲間外れみたいになるのはもうごめんだ。」


「違うのウルフ、」


話そうとしたセミラミスをジェームズが横から割って入る


「いいんだセミラミス。俺から話すよ。」


「この際どっちでもいい。」


「落ち着いて聞いてくれ。顔見知りの他の勇者から聞いた話なんだが…昨晩だけで勇者が50人ほど死んでいるらしい。」


「はあ⁉︎」


一瞬の沈黙の後ウルフが呆気に取られたように言う。


「なんだよそれ…待てよ、機関からは何も連絡はないぞ。まさか教会の奴らか?」


「それが一番有力な線なんだがどうも違うみたいなんだ。」


「まさか勇者同士で⁉︎」


ジェームズは首を縦にも横にも振らず、目線だけを床に落とす。


「黒い剣を持った正体不明の男だそうだ。」

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