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勇者たちの鎮魂歌  作者: 砂場遊美
第4章七日間戦争編
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一日目5

「どうだ?何か手がかりはあったか?」


「いや、めぼしいものは何も。」


「くそっ!」


首都の東部にある勇者ジェームズの隠れ家ー

そこに亜人種ウルフの一行は身を寄せていた。

亜人種、ヒトと別種の生物の狭間の存在。ヒトでありながらヒトとは異なる容姿や能力を持つ。この地上で間違いなく一番多いのはヒトである。だがヒトに近い存在でありながら、ヒトとは言い切れない彼らは常に差別される運命にあった。

この戦いに参加することすら彼らにとっては一筋縄ではいかないことだった。参加者は魔王討伐に参加した勇者が大部分を占める。

亜人種は彼らのみ。公に亜人種への差別は謳われてはいないものの、未だに根強い差別は残る。

だからこそ、ウルフが得た仲間、ヒトであるジェームズはこの上ない助けになっている。


ジェームズが仲間になっていないうちは隠れ家どころか宿の確保すら不可能だったのだ。亜人種であるだけで宿の主人の態度はあからさまに排他的になった。その態度で自分たちがどれだけ傷ついたか、もうわからない。いつしかそのような扱いに慣れてしまった。いや麻痺したと言ってもいい。

誰の目にもつかないようにフードをかぶり、あるいは人目を避け、誰もいないところにいるしかなかった。そうせざるを得なかったのだ。


第一回戦、コロッセオでの戦い。彼らはコロッセオの観客席にいることすら憚られた。好奇の目にも晒されるのは嫌だったからだ。だから彼らは竜人の呼んだ小型の翼竜、ワイバーンに乗り、遥か上空から戦いを観るしかなかった。結果的にそれが、ジェームズという心強い味方を引き入れることになったわけだが。


コロッセオで暴走した教会の戦士達との戦い以降、竜人の消息が掴めていないことがウルフに暗い影を落としている。

ジェームズやセミラミスの捜査も今のところ功を奏していない。


セミラミスはまだ外に出ているが、1人で大丈夫だろうか。見かけが人間離れしている自分は隠れ家の見張りという名目の留守番。竜人をコロッセオで見殺しにしてしまった負い目が焦りに拍車を掛ける。

コロッセオにはおらず、大方どこかに潜伏している可能性が高い。竜人は無事だろうか。教会の戦士達に捕まっている可能性も考えられたがその線は幸いにも少ないそうだ。


セミラミス曰く、


「私は気絶していてわからなかったのが歯痒いのだけど…ウルフの話から推測するに、恐らくゴーレムは結界を張って私達を閉じ込めていたことになるわね。

その意図は無関係な者の暴走を防ぐこと、そして教会の戦士を足止めすることよ。」


後にジェームズも続き、


「うむ。あの一件は教会の戦士の暴走故に起きた事態だ。つまり教会の戦士による被害の防止、教会の戦士討伐の意思確認、そして無益な戦いによる暴動の拡散を抑止することが目的だったわけだ。」


「……つまり……どういうことだ…?」


「竜人もゴーレムの結界に閉じ込められていたということになるの。そして、討伐すべき教会の戦士も恐らくゴーレムに閉じ込められたか、あるいは機関の攻撃を受けていた可能性が高いのよ。率直に言うわ、竜人は生きている。」


その言葉を信じて竜人の捜索をしているのだが、思うような成果が得られず、ウルフはやけになっているところなのだ。


「……まだ、姿がわからなくなって1日経ったかどうか、というところだ。それに竜人がそう簡単にくたばるとは思えんな。」

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