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勇者たちの鎮魂歌  作者: 砂場遊美
第3章魔王討伐編(過去)
153/209

凱旋、そして

「アーサー王万歳‼︎」


沿道を埋め尽くす民から惜しみない喝采が送られる。馬車に乗り、民に笑顔を振りまきながらログレスの勇者、アーサー17世ヨハンは凱旋した。

これほど民が心から笑っている日はいつ以来だろうか。傍らに妻モルガンを伴い、アーサーは城へと戻る。

鼓笛隊の音楽が華々しく、凱旋を彩る。それに負けじと響き渡る民の喝采。この喧騒こそ正に平和の象徴。アーサーはそう思っていた。


「こんなに嬉しそうな民の顔、久しぶりじゃないかしら。」


モルガンがヨハンに語りかける。


「ああ、そうだな。」


素っ気ない答えにまだ疲れが残っているのだろうと気遣い、モルガンは民へと優しい微笑みを向ける。

このお祭り騒ぎは三日三晩は続くだろう。いやもっと長いかもしれない。

長きにわたって戦い、取り戻した平和。だがそこには幾つもの犠牲が伴った。


ログレス城の城門へと通じる大通り脇の広場。そこに今回の魔王討伐で戦死した者の名前が全て記された慰霊碑が建てられた。

平和への礎。共に生きてログレスへと帰還したかった仲間たち。





「一足…遅かったか…。」


魔王討伐後、ヨハン達3人はコキュートスへと戻った。だが彼らの眼前には亡骸となったシモーヌとギルバートがいた。壮絶な最期。戦士として戦い果てた2人の英雄。

だからこそ、アドルフのパーティ、ギーゼラとハルトマンが生存していると知った時、ハルトマンの魔法陣で異空間へ2人で隠れていると知った時ヨハンは自分を抑えることができなかった。


「何故だ⁉︎何故助けてやらなかった⁉︎その魔法陣を何故私の臣下に施してやらなかったのだ⁉︎答えろ‼︎」


殴られたハルトマンは雪原に倒れ伏した。

殴られた頬をぬぐい、ヨハンを睨みつける。


「何故だと?アヴァロンが切れた状況で最善を尽くしたまでのことだ。第一私の魔力も限界が近かった。2人で精一杯だ。吹雪でお二方の所在もわからなかった。」


「アーサーよそこまでにしてくれ。仲間を失った気持ちは察する。だがハルトマンの判断に間違いはない。この2人はことあるごとに争うが、非常時にはこのように結束する。それはお前とてわかるだろう。」


ヨハンはやりきれない気持ちで一杯だった。2人の亡骸だけでもせめて母国へと持ち帰ろうと誓った。吹き飛んだシモーヌの右腕も見つけた。無言の帰還。ヨハンは帰りの飛空挺の中で、泣きながら2人の亡骸にずっと寄り添っていた。

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