呪いの連鎖4
「何だと‼︎」
アーサーが口を挟む。いや挟まずにはいられない。魔王は倒しても再び蘇る。そしてそれを倒すことが勇者達に与えられた責務。その根底を覆す一言だ。アーサーに与えた衝撃は大きい。
「まあ落ち着きたまえ。話はまだ続く。
そう、私には蘇る力などなかった。私はアーサー率いる勇者の一団に倒され、消滅した。」
景色は凱旋ムードに包まれる城下町へと姿を変えた。
「人々は安堵した。魔王の脅威はもうない。これから訪れる平和な世界を謳歌し、この平和を限りないものにしようと、そう誓った。」
魔王が黙る。景色が歪み始めた。今までのように変わるわけではない。ひっきりなしに聞こえる凱旋の音楽隊の奏でる音楽が歪な音に変わる。溶け出すように歪む世界は仮初めの平和に限界が近いことを表すようだった。
「私を倒して平和が訪れる⁉︎馬鹿なことを言うな!私を倒してどうなったと思う?私を倒した勇者達が、各々の戦果を競い合い、醜い戦を繰り広げたのだ!
長い長い戦だ。魔王討伐以上のな!己が欲望のままに動き、ただ殺しあう。勇者同士でも殺しあったさ。
そうだ、お前達は私という倒すべき目標のため、一時的に団結していたに過ぎない。
その目標がなくなった時、訪れたのは平和ではない、新たな戦乱だ。」
再び荒野。だがそこには無数の屍があった。
「アーサー1世アーノルドは嘆いた。こんなはずではない。魔王を倒せば平和が訪れる。想像していたはずのものと真逆の結果を導いた。これは私の責任だと。
だが、あの男はその責任を私にも負わせようとした。貴様ら人間には寿命がある。奴は死ぬ時どんな顔をしていたのだろうか。これからの世界に希望を持った顔?違う!子孫に魔王討伐を課さねばならない歯痒さ?違う!
そう、奴はあの男は…この責任から逃れられる、そう安堵して死んだのだ。」
誰も一言も発さない。
「回りくどい言い方はやめよう。アーサー1世アーノルドは魔王を倒しても人間同士の戦乱が続くことに絶望し、最悪の選択をした。
奴は死霊使い、ネクロマンサーと契約し魔王が死んでも一定期間を置いて永遠に蘇り続ける術を施した。
後は君達も知っての通りだ。」