呪いの連鎖3
「そうしてこの世界の基礎が出来上がった。もうその頃には他の異世界を観測する必要はなくなっていた。おりしももう異世界は観測できなくなっていた。逆に言うとだ、この世界はもう独特の、たった一つだけの価値ある世界になっていた。」
ふと気がつくと、周りは夜の海辺ではなく、太陽の光がふりそそぐ、森の中に変わっていた。
「それからさ、勇者達と我々魔族の戦いが始まったのは。ただこの頃、異世界にも負けない強い勇者を作る目的で、魔族も強めに作られていた。人間達は過酷な環境下でこそ真価を見せる。彼らは勇者というシステムを作り、尚且つそれを世襲させ、より強い勇者を遺すことを考えた。」
森がざわめく。
「そして勇者達に合わせて、勇者達の真価を発揮させるべく魔王という魔族の頂点が作られた。そう私だ。私は魔族を配下として率い、圧倒的な力で人間をねじ伏せる、そのように作られた。」
景色が変わる。そこは魔王の城と思しき場所だった。おあつらえ向きの黒い雲の空と雷まで付いている。
「魔王を倒し、世界に平和をもたらす。それを目標に勇者達は切磋琢磨した。武を磨き、心を鍛え、限界を超える力を手にした。そう全ては魔王を倒すために。
この頃、勇者達は異世界の勇者達を名乗り始めた。例えばアーサー、ジークフリートといった具合にね。目標とする人間になりきることでその伝説にまで上り詰めようとした結果だ。だがここで問題が生じる。」
景色はさらに変わり荒野へと姿を変えた。
「目標とする魔王を倒してしまったのだ。
そう、その勇者の名はアーサー1世アーノルド。アーサー17世ヨハン、君の先祖にして勇者システムの礎を作った男、そして、忌まわしい呪いの連鎖を作り上げた張本人だ。」
アーサーが息を呑む。だがここで初めてアーサーは口出しをした。
「世界の成り立ちは理解できた。まあにわかには信じ難いが。だが先祖であるアーサー1世アーノルドは勇者システムを作り上げた男、それ故今尚賞賛される者だ。永久に蘇る魔王、それに対抗するため名を世襲させる。それのどこが呪いの連鎖を作り上げたと言うのだ!」
「ほう、やはり真実はこうして捻じ曲げられるのだな。ここからが私の話したかった本題だ。またしばらく君達には聞き手に徹してもらおう。」
景色は再び変わり、魔王の城、その玉座へと姿を変えた。
「まず魔王には、永久に蘇り続ける能力など備わっていない。」