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勇者たちの鎮魂歌  作者: 砂場遊美
第3章魔王討伐編(過去)
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絶対零度の戦い4

「ぬ…ここは…?」


アーサーはいつの間にか気を失っていたようだ。頭を抑えながら辺りを見回すと、そこは先ほどと同じ暗闇しかない。

だが先ほどと違うところもあった。


「なんだなんだ、ここは一体⁉︎我輩は空にいたはずだぞ⁉︎」


空で敵と戦っていたはずのアドルフが同じ空間にいたのだ。


「全く…訳がわからねえな。」


吐き捨てるように竜人も呟く。どうやら全員がこの暗闇に集められたらしい。

アーサーはそう思って辺りを再び見るがその想像が間違っていたことに気づいた。


「ダンテ将軍…シモーヌ…ギルバート…それに錬金術師や女魔術師は…いないのか…?」


「どうやら…俺たち3人しかいないみたいだな。」


竜人の一言はとても重たく、アーサーに響いた。


「こんなところに長居はできない!今すぐここから抜け出して、仲間たちと合流しなければ‼︎」


アーサーの慌てようは今まで見たことがない。それだけに2人は今の状況が悠長に構えていられることではないと理解し始めた。


「おいおい勇者サマ、何をそんなに焦ってるんだよ。あいつらだって歴戦の猛者だろ?

任せておけばいいじゃねえか。」


竜人がアーサーに声を掛ける。


「そうとも!この竜人の言う通りである‼︎それとも貴様、仲間を信じられぬとのたまうか‼︎」


アーサーは鋭い表情で2人を見る。その顔には威圧感ではなく焦りが見て取れた。


「忘れたのか⁉︎このコキュートスは私のアヴァロンなしでは、普通の人間は活動できぬ。お前たちは問題ないのだろうが。あの者たちがもしこの空間ではなく、コキュートスに戻されたならば…時間はあまり残されていない。」


2人は黙る。作戦会議であれだけ聞かされていた重事項だったのだが、頭から抜けていたのだ。今の流れにアーサーは落胆したに違いない。

事実この2人は先ほどまで作戦を無視し、ただ戦っていただけに過ぎない。

沈黙がただでさえ暗いこの空間に、更に暗さをもたらす。


「アーサーよ、心中察するが…まずは現状を確認しなければどうにもならぬ。この空間のどこかにいるかもしれないではないか。」


アドルフが打って変わって落ち着いた様子で話す。彼らしくない言動に竜人が驚く。


「お前…言ってることまともなのが…」


何とも言えない様子で竜人はアドルフを見ている。おまけに正論まで言っているあたり煮え切らないものがあるのだろう。


「確かに…アドルフ、いやジークフリート殿の言う通りだ。まずはこの空間を探すか。」


「悠長にしてる時間はないんだろ?さっさと探そうぜ。」


竜人が炎を吐いて空間を明るくしようとしたその時、突然空間が明るくなった。

あまりの眩しさに3人は目を閉じた。


「な、なんだこの光は⁉︎」


「くっ…目を開けていられん…!」


ーやあ、待たせて申し訳なかったね諸君。ー


「こ、この声は…!」


ー君たち2人もお楽しみの最中だというのにすまないね。だが私の話を聞くに値するのは君たち3人ということだ。ー


「くっ、魔王…他の…仲間たちは、どこにいる⁉︎」


ー君らしくない。感情的になりすぎているね。だがそのことが気になって私の話を聞いてもらえないのは困る。ー


「答えろ!」


ー他の仲間たちはコキュートスに戻したよ。今頃必死に君の到着を信じて戦っているさ。ー


「貴様…!」


光がひときわ眩しくなった直後、ふと目を開けるとそこはまた見知らぬ空間が広がっていた。


夜の海辺。彼らは夜空に満点の星が輝く夜の海辺にいた。


「これはまた…どういう術だ?」


ーいい場所だろう?ここから全てが始まったのさ。この忌まわしい呪いの連鎖がね。ー

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