コキュートスへの進軍
「ガハハハハハハハ!ハルトマンめ、いい情報を持ってきおるわ!」
戦いに没頭しすぎて敵兵器の再生に気付かなかったアドルフだが、今の情報を聞いてさらに戦いに臨めると思っているのだろう。
彼の眼には最早敵兵器しか映っていない。
「つまり、コアを破壊しなければこの戦いが永遠に続けられる…そういうことなのだろう!?ハルトマン!!」
バルムンクから放たれる衝撃波が敵兵器の左翼を両断する。
「血沸き肉踊る!!我輩は既に20機は破壊しておるぞ!!竜人よ!まさか我輩よりも倒した数が少ないということはないだろうなあ!?」
アドルフが竜人を挑発した。
だが竜人はアドルフを一瞥すると、すぐに目の前の兵器の破壊に戻った。コアを探して完全に破壊するつもりなのだろう。
「はあ、はあ…さっき破壊した球体がコアなら、これで2機は完全に破壊したはず…」
息を切らす竜人の頭上から衝撃波が襲い来る。
間一髪で避けるが、目の前にはアドルフがいた。敵兵器にバルムンクを突き刺し兵器の上に仁王立ちしている。
「何のつもりだアドルフ?」
「何のつもりだ、だとお?貴様、あれほど我輩を煽っておきながら、戦いから降りるのか!?」
竜人には彼の言っていることがわからなかった。
沈黙を通していると、アドルフが追い打ちをかけるように言う。
「しらを切るつもりか!コアを破壊すれば、戦いが愉しめなくなるではないか!!」
「てめえ、俺たちの飛空艇が墜落してもいいってのか?」
竜人が静かにアドルフを睨む。その眼光は鋭い。
「知れたこと!!この程度で墜落するならあの者どもは真の勇者ではない!!」
竜人は呆れて物も言えなかった。この男はこの期に及んでまだ、戦うことしか考えていない。出発する前、あのダンテとかいう勇者が怒ったのも今なら納得できる。
「俺たちがあの兵器を倒さないと、飛空艇が着陸できない。でなければ魔王は倒せず、首都もいずれ陥落する。亜人種の俺ですらわかることが、お前にはわからないのか!?」
「そんなこと、知らん!!!」
アドルフの咆哮は大気を震わせ、敵兵器の外装にヒビが入るほどだった。
今のアドルフからは敵意しか感じ取れない。
「邪魔をするのであれば容赦はせん。竜人よ。貴様もわが一族の礎となるのだ。」
「戦闘狂もここまでくると哀れだな。いいぜ来いよ。本物の竜の力見せてやる!」