死地4
「うおおおおおおおおおおおおお‼︎」
爆撃機のような一撃が敵兵器に叩き込まれる。攻撃の主はジークフリート14世アドルフ。
コキュートス上空ー
勇者側の飛空挺は目的地を目前にして敵兵器による脅威にさらされていた。
合計5機の魔導兵器が間断なく攻撃を続けている。漆黒の機体はまるで地獄の門番のように行く手を阻んでいた。
おまけにコキュートスは止むことのない猛吹雪が吹き荒れ、生身での突破は不可能である。
敵兵器の破壊と移動の両方を飛空挺に乗船した状態では到底行えない。
だがこの2人は違った。
「この程度の吹雪で我輩は止められぬ。
唸れえええええ、バルムンク‼︎」
生身でコキュートスにいたならば、即座に氷漬けになるのが常である。だがアドルフには通用しない。彼が、いや彼の一族が何代にもわたり受け継いで来た不死身の肉体。それが吹雪などものともしない耐性をアドルフに付与しているのだ。
翼を持たないアドルフは手にした大剣バルムンクの衝撃波と、破壊した敵兵器の瓦礫を足場がわりにしていた。
敵の砲弾は圧縮された魔力が高速、高威力で放たれるものだ。それ自体が高濃度の魔力であるため、下手に魔法や魔力を帯びた肉体で対抗しようものなら、砲弾は誘爆し、大規模な爆発を発生させる。
つまり、魔力なしでこの砲弾を避けるないし、消滅させなければならない。
そうしなければ誘爆した砲弾が更に別の砲弾に誘爆し、連鎖的に大爆発を引き起こす。そんな状態に耐えられるものはいない。
一部の例外を除いて。
前方から2発、上方向から1発、砲弾が放たれる。砲弾同士が近づいても誘爆を起こす。アドルフの周囲で大爆発が発生した。爆煙と猛吹雪、止むことのない砲弾だが、これでも彼を止められなかった。
爆煙から無傷で現れたアドルフはバルムンクを砲弾に突き刺した。その突き刺さったバルムンクをやや前方に倒す。やがて砲弾は爆発し、その爆風と突き刺した剣を利用してアドルフは更に前進する。
「ガハハハハハハ!この程度の爆風、丁度良いわ‼︎」
アドルフはそのままの勢いで敵砲弾の射出口へと侵入した。するとものの数秒で、敵兵器は傾き、異音を立てながら爆発した。空には吹雪と燃え盛る兵器の残骸とが舞っている。
「1機撃破‼︎
ぬるい、ぬるすぎるぞ、魔王の兵器よ‼︎」
不死身の肉体にはこの吹雪も、爆発もまるで意味をなしていない。
崩れ落ちる兵器と、更に激しさを増すアドルフの、修羅の如き剣舞。爆発と猛吹雪、衝撃波が大気を震わせた。