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勇者たちの鎮魂歌  作者: 砂場遊美
第3章魔王討伐編(過去)
133/209

死地

「待てえい、竜人!」


竜人の言葉を遮ったのはジークフリート14世アドルフだった。彼は竜人に対して、ライバル心をむき出しにしている様に見える。

その右手には大剣バルムンクが既に握られていた。


「お前、ちょいと出しゃばりすぎじゃあないか?聞けば首都でも大暴れしたらしいではないか。」


「ああ、そうだが。」


それがどうした、と言わんばかりに竜人が返す。ドラゴンと人間のハーフ。生まれながらにして竜の血を宿す半人半魔。彼にとって、あの首都での戦いは大暴れの内に入らない。

むしろ正体不明の影を前に退却した負の実績もある。

そのことを蒸し返されて、竜人は半ば苛立っていた。


「お前ら人間じゃあ、この吹雪は無理だろう。あの勇者サマの力なしだと外に出た瞬間氷漬けだ。」


「ほう…」


アドルフの眼に殺気が宿る。

アドルフはずいと竜人の前に立ちはだかる。


「へっ、どれだけ強がろうと所詮ヒトだろうが。ここは俺に任せて茶でも飲んでるんだな。」


竜人が口から軽く炎を吐く。ヒトではできない芸当。それがこの男にはいとも容易くできてしまう。歴戦の勇者と言えど、血は、種族の壁は覆せない。


「貴様…何か勘違いしておるな。」


「何だと?」


アドルフがバルムンクを背中の鞘に収める。

それが合図の様に次の瞬間目を疑う光景が広がった。


アドルフの頭が炸裂した。


一瞬の出来事だった。

背後にいたギーゼラがアドルフの顔を爆破したのだ。

爆破魔法をあろうことか自分の仲間に向けた。

爆発といっても規模は大きくない。ただ人間の頭を吹き飛ばすのは容易な威力には違いない。

しかもギーゼラは笑っている。仲間の顔を爆破して笑っていたのだ。

その場が凍りつく。飛空挺の揺れなど最早気にならないほどに。


「お前ら…正気か⁉︎」


竜人が思わずたじろぐ。

アドルフは直立不動のままだが生きてはいないだろう。顔は爆煙で見えないが、それでも致命傷なのは明らかだ。


「そんなに戦いたかったのか⁉︎だったらそう言えばいいだろう⁉︎仲間の頭を爆発するなんて…そこの女‼︎一体なに考えてやがる!

お前も頭がぶっ飛んでるぜ!」


まくし立てる竜人。だがギーゼラはくすくすと笑うばかりだ。そしておかしいのは、その笑顔が、狂気に歪んだものではないからだった。何故こんな顔ができるのか。


「ふふふ、亜人種って単純なのね。からかいがいがあるわ。」


「何…?」


竜人がアドルフの方に向き直る。煙が徐々に晴れる。


「ば、馬鹿な…今のは直撃だったはずだぞ…」


そこには傷一つないアドルフの姿があった。


「いやはやそこまで驚かれるとやった甲斐があるというものよ。」


「てめえ、そんなナリをして魔術師の類か?」


「ガハハハハハハハ‼︎よくぞ聞いてくれた!我輩は竜の血を浴びて“不死身の肉体”を手に入れたのだ!」




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