対話5
「おお‼︎ようやっと敵のお出ましか!待ちくたびれたぞ!」
緊迫する状況の中、ジークフリートは1人喜ぶ。傍らのギーゼラも彼の表情を見て、心なしか嬉しそうである。
「あれは恐らく魔物の兵器の類いでしょうな。あれをかいくぐるしか突破する道はないようですぞ。」
フードの奥から鋭い眼光を覗かせるのはギルバートである。
彼は手にした杖に魔力を込め、目を閉じた。
「………見えた。敵兵器は前方に合計5機展開。そのどれもが魔力を砲弾として打ち出すもののようだ。」
透視、予言魔法に長けるギルバートは即座に状況を把握した。
なおも彼は続ける。
「領域内に侵入した敵を自動で迎撃する兵器の様ですな。恐らく1機あたりがこの飛空挺よりやや大きい。兵器は飛空挺のような形状で、両翼に相当する部位から魔力を砲弾として発射するもののようだ。」
「さっきからの揺れはその砲弾を回避しているってことか。」
ギルバートの話に耳を傾けるのは竜人である。
「ええ、そのようですな。だがこのまま敵との距離が近づけば間違いなくこの飛空挺は撃墜されるでしょう。」
「撃墜までの時間は?」
不吉なことをさらりと竜人は言う。
「明確な時間はわからないが…およそ5分といったところでしょうな。」
「では悠長にしている時間はないということかしら?」
少し苛立った様子でギーゼラが詰め寄る。彼女はこの飛空挺が撃墜されることではなく、単純に戦いに赴けなくなることに苛立っているのだ。
その時飛空挺内が黄金の光に包まれた。
アーサーがアヴァロンを発動したのだ。
「ギルバート、これで撃墜の時間は延ばせたか?」
「おお、アヴァロン…!恐らくですが、これで更に時間は伸びましたな。」
アヴァロンによる効果で砲弾を回避する確率が上昇したのだ。この飛空挺は機関の魔法による自動操縦となっており、人間が操縦するより安全性は高い。だが念には念を押して、アヴァロンで万全の態勢となった。
「コキュートスまでの距離はどうなっているのです?」
ダンテが尋ねる。
「もうすぐそこまで見えていますぞ。ただあの兵器をかいくぐらない限り、安全な着陸は不可能ですな。」
「おい、じじい。」
竜人がギルバートに話しかける。
「何か?」
「あの兵器を減らせば、それだけ助かる確率が上がるってことだよな?」
「ええ、そうですとも。」
「なら俺が出る。竜属性の俺ならアヴァロンなしであの吹雪の下でも多少は大丈夫だ。
それにこの面子じゃあ、飛空挺の外に出て直接敵を叩けるやつはいねえだろ。」