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勇者たちの鎮魂歌  作者: 砂場遊美
第3章魔王討伐編(過去)
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対話4

「ダンテ将軍…顔色が悪いが、どうかしたのか?」


ダンテはアーサーに声を掛けられるまで放心状態、とまではいかないが、心ここに在らずといった様子だった。


「あ、いえ…最終決戦となりますので。少々落ち着かないものでして…」


歯切れの悪いダンテの物言いにアーサーは更に心配そうにダンテを気遣う。


「もうじきこの飛空挺はコキュートスへと到着する。そうなればあとは魔王を倒す以外になすべきことはない。

ただそれのみを完遂すればよいのだ、将軍。」


「重々承知致しております。」


「それは真か?出陣前、1人で部屋に戻ってから貴殿の様子がおかしいことが、私は心配なのだ。」


アーサーがやや強めにダンテに詰め寄る。それほどダンテの態度は変わっていた。そしてそれが、これからの戦いに影響を及ぼしかねないことがアーサーの懸念でもあったのだ。

飛空挺、自由の女神ー

アーサーら8名は世界の命運をかけた最終決戦の地、コキュートスへと進行していた。

だが、作戦会議でのいざこざから1人いなくなったダンテは、再び姿を現してから今のような有様になっていた。

他の者もダンテの変わり様に大なり小なり驚いている。


「ああー、ダンテ将軍よ、先程は悪かったな。」


申し訳なさそうにダンテに話しかけるのは、らしくない面持ちのジークフリートだ。どうやらダンテの変貌ぶりに責任を感じているらしい。


「我輩も人類の存亡をかけた戦いに、我輩なりの美学を持って臨んでいるのだ。それだけはどうか理解して欲しい!」


ジークフリートなりの謝罪を受けるものの、ダンテはやはり上の空だ。


「ご心配をお掛けして申し訳ありません。断じて怖気付いているわけではないのです。戦闘面での不安もありません。」


ダンテは答えるが、言い方はたどたどしく、余計に周囲の不安を煽るだけだ。


「うむ…まあこの期に及んでは何も言うまい。ただ戦場で遅れを取ることだけはないように。」


アーサーはそれだけ言うと、ダンテの元から離れた。ダンテは1人佇む。

目はやはりどこか虚ろで、今までの厳格さは感じられない。

周囲の心配も当然である。

あれほど厳格な態度が短時間で変貌したのだ。その変化は只事ではないと、皆がわかっているからである。


「コキュートス到着までまだ少し時間はある。それまでは、私も考えを整理したい。」


1人呟く。部屋に戻ってから魔王に会ったことは誰にも言っていない。そして魔王から聞いたことも。


「揺さぶりに決まっている…とはいえ、ここまで動揺してしまうとは、私も鍛錬がまだまだ足りないな。」


その時飛空挺が傾いた。同時に大きく機体が揺れる。

それが合図のように、ダンテは内にあった意識を外へ向ける。あの魔王から聞いたことを一刻も早く忘れるように。


「何事です⁉︎」


ダンテが皆の元へ合流する。その顔つきは先程までのものとは打って変わって、いつものダンテのものだった。

そのことに他の者達も多少安堵したように見える。

だが飛空挺の揺れ、そして動きは激しさを増す一方だ。


「コキュートス上空に敵勢力を確認した。これより戦闘へ突入する。」

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