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勇者たちの鎮魂歌  作者: 砂場遊美
第1章英雄編
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かつての肖像

「あたしはね、青空が見てみたいんだ。」


厚い雲に覆われた空を仰ぎながら不恰好な鎧に身を包んだ女性が囁く。

暗く、閉ざされた空とは対照的に女性は明るい笑顔を仲間たちに見せた。


「さあ行こう!生き残って、またみんなで笑おう!」







「家を出て魔王討伐をしていたと思えばのこのこと戻ってきたか。よくもまあ戻ってこれたものだな。一族の恥さらしが」


ここメディチ家は4代に渡って続く白魔法の名家である。回復魔法のエキスパートとして200年以上続く名門。

苛烈な戦いに身を投じる勇者たちを陰で支える、パーティに欠かせない存在である白魔導士の一族。その次期当主として期待されていたのがアンセムである。


アンセムは名家としてのプライドや家の存続、そういったしがらみが嫌になり家を出ていたのだった。

それからアンセムは白魔導士として、メディチ家としてではなくアンセム個人として、他者の助けとなるために世界各地を転々としていた。


4代目の当主であるアンセムの父は家柄や体裁を重視する古典的な魔導士だった。そのため何年も家を空けていて、今更戻ってきたアンセムに対して怒りを露わにした。


「恥さらしなのは承知です当主殿。だけど俺は魔王討伐に参加した。世のために戦った。その中で自分の未熟さや間違いにも気づいたんです。」


アンセムは当主である父の前でひざまづいてはいるが、怒りか反抗か体は小刻みに震え、声色からも到底尊敬の念は感じ取れない。


当主は椅子に深く腰掛け、アンセムを見下ろしていた。


「お前が言わんとすることがわからないわけがないだろう。仮にも父親なのだからな。

だが…家を捨て、責任から逃げたやつなどに授ける魔法はない。」


そう言うとアンセムは顔を上げ、怒りの表情を露わにし、当主にくってかかった。


「家だと⁉︎責任だと⁉︎そんな下らないことにこだわっているからこの家は没落する一方なんだ‼︎俺はこの5年間、各地でいろんなやつと出会い、共に戦って見識を深めてきたんだ!」


当主は一切動じずじっとアンセムを見据えていた。そしてしばらくした後口を開いた。


「だから魔王討伐で戦死したお前の仲間を蘇らせたいと?戯言も大概にしろ。

どの道、この家を捨てたお前に継がせるものは何一つない。弟のクリントに5代目を継がせる。お前は好きにしろとあの時も言ったはずだ。考えが甘いんじゃあないのか?」

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