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勇者たちの鎮魂歌  作者: 砂場遊美
第3章魔王討伐編(過去)
125/209

コキュートス3

「確かにな。となると魔王本体のもとまで早急に攻め込まねばならぬということか。」


「コキュートスに本拠地があるということはわかっていますが…敵本拠地の詳細については不明のままなのでしょう?」


3人の作戦会議は続く。暗い講堂の中で、世界の命運を賭けた戦い、その最終局面での行動が決まろうとしていた。


『ジェラルドよ。作戦は決まったか。』


講堂の中にもう一つ影が現れた。だがそれは実体ではない、ただ魔法によって投影されたホログラム映像である。そしてその主は、


「大司教…申し訳ありません、まだ侵攻作戦については審議中でございます。」


勇者機関の大司教である。現段階での勇者機関のトップ。役職名が大司教というのは、教会から独立した際に、教会の序列や役職をそのまま引き継いで組織を結成したからである。しかしホログラムとはいえその存在感は大きい。彼のホログラムが現れてから講堂の雰囲気はさらに重いものとなった。


『作戦決行まであと2日しかないのだ、悠長にしている暇はない。侵攻作戦については貴様に一任したのだ、その任は果たしてもらわねばならぬ。』


「重々承知しております。」


『貴様もわかっておろうがコキュートスは天然の要塞、自然が作り出したまさしく死地。吹雪で視界は遮られ、生半可な装備や耐性では歩くことすらままならぬ。』


「ええ。そちらにつきましてはアーサーのアヴァロンを用います。」


『ほう、無難な手だな。』


無難、その一言にジェラルドは少しばかり怒りを感じる。

それ以外に手段はない。通常の魔法では維持に時間も魔力もかかり、効率が悪いのだ。件の影に対策が必要とはいえ、侵攻して敵本隊を叩かなければ、元も子もない。

それだけに今の大司教の一言は他人事にしか聞こえなかった。


『我々に敗北は許されん。それを肝に銘じ、作戦決行の糧としたまえ。我々はあの忌まわしい奴隷国家と交渉せねばならんのだ。貴様ら3人に世界の命運がかかっている。それを忘れぬよう。』


「はっ、直々の助言、ありがたく頂戴いたします。」


『この戦いが終わって以降の貴様の席についても考えている最中でな。他の2人についてもだ。まあ案ずることはない。ただ作戦のみに腐心するがよい。』


そう言ってホログラムは揺らめいたのち消えた。講堂の張りつめた空気がわずかに和らぐ。


「ジェラルド殿、珍しく緊張してたでしょ。」


マキシがややおどけた口調で尋ねる。

彼は大司教が現れても表情は変わらず、緊張もしている様子もなかった。おそらくこの姿勢が大司教に評価されたところなのだろう。


「しかしえらく他人事でしたなあ、大司教も。あの影が現れた時は少し興奮気味かと思っていたのですがな。」


デニスが腕を組みながら言う。ふんぞりかえっているというよりは、大司教がいなくなり、緊張から解放されたという方が適切だ。腕組みもわずかな緊張を悟られまいとするためのものだ。


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