戦場の修羅たち5
「無粋で節操のない殿方はご遠慮いたしますわ。」
兵士たちの突撃にすぐさま対応したのはギーゼラだった。
彼女は左手中指にはめた指輪に口づけし、呪文を唱え始めた。
彼女の体の紋様や腕に埋め込まれた宝珠も共鳴するかのように妖しく光りだす。
「さあ!苦痛に歪む顔を見せて‼︎」
部屋中に禍々しく、重々しい魔力が充満していく。
ギーゼラが左手を兵士たちに向けると、突撃してきた兵士たちは突然苦しみだし、泡を吹いて倒れ始めた。
苦悶の表情を浮かべて首を掻きむしったり、部屋から出ようともがいていたりしたが、少しすると兵士たちは動かなくなった。
「ああ…毒霧に歪むその顔、悲痛な声、何度見ても見飽きないですわ。」
「ぐっ…貴様ら…ゆ、許さん…」
将軍は最後まで毒霧に苦しみながらも呪詛の言葉をアドルフ達に吐き出したが、しばらくすると口から泡を吹き出し苦痛に歪んだ表情で事切れた。
「やれやれ。片付けてくれるのはありがたいが、死んでしまうとホムンクルスにできないじゃないか」
「あら、ごめんなさい。あなたのことなんて考えてもいなかったのですわ」
相変わらず2人は相容れない様子だったが、その強さにアドルフは確信していた。
これからの戦いを勝ち抜くのは自分たちであると。
「まあ2人とも落ち着くのだ。アルミエーレの兵を幾分か殺してしまった以上立ち止まるわけにはいかん‼︎」
アドルフが力を込めて話す。まるで演説のようだ。
言い争っていた2人も静かになる。
「それに、この数の兵士を殺しちゃあ…他の奴らも黙っちゃいないだろうさ‼︎」
アドルフがそう言ったのとほとんど同じ時に増援の兵士たちが次々と玉座へと流れ込んできた。
「さあて…こいつら全員ぶちのめして、これから来る猛者との戦いとの前哨戦としようぞ‼︎」
3人の修羅たちが戦いの中で輝く。
数多の屍を積み重ねながら、来たる猛者との戦いに待ちきれずー