教会の戦士3
「というわけだ。君たち若手にはこの戦いは貴重な経験になることだろう。」
トレミア 聖堂騎士団詰所
急遽召集された若手の聖騎士達は、教会お抱えのパラディンであるイングリスから今回の緊急任務についての説明を受けていた。
「貸しとは実にいい響きだ、機関の犬よ。」
「ではお力添えをいただけるということでございますか。」
「もちろん。ただし儂ら教会はそちら以上に存続が危うい。ベテランの騎士や魔術師の派遣は考えておらん。」
「………と言いますと?」
「そちらには聖騎士団を派遣しよう。実は教会が最近設立した新進気鋭の者達を集めた新しい部隊でな。
メンバーは若手ばかりだが、聖属性の力を持っている。戦場では大いに活躍することは保証する。」
「イングリス殿やハンナ殿には出陣願えないのでしょうか。」
「図に乗るな、機関の犬めが!あの2人は教会の中でも更に特別な者達だ!こんな戦いに放り出していい人材ではない!」
「大変失礼致しました。これから機関の者に話を通して正式に派遣の手続きをさせていただきます。それではー
今回召集された人数はおよそ30名。
その誰もが神の加護を受け、聖なる力をその身に宿した聖騎士達である。
その団長として抜擢されたのは、ゴドフロア9世の息子であり将来ゴドフロアを継ぐと目されているチェスターであった。
「いいかお前達‼︎これは戦争、生死を賭けた本物の勝負だ。敗者とはすなわち死者である。
偉大なる我らが主、ゴドフロア9世に選ばれたことを光栄に思うがいい。なぜなら君たちは死なないからだ。」
チェスターにはイングリスの言っていることがよくわからなかった。
イングリスは明らかに作り笑顔とわかるくらい不気味で、引きつった顔でチェスターを見た。
「私の言っていることがわかるよな?チェスター君。」
チェスターは内心、面倒臭かった。そんなこと知っているはずもないし、父である9世からも聞いたことがない。
チェスターはイングリスとは目を合わせず地面をキョロキョロ見ながら、考えてるふりをし、「あー」とか「うーん」とかいう言葉を発しながら最終的に
「すみません。わからないです。」
と言った。
さすがに9世の息子に横柄な態度は取れないのか、イングリスは若干苛立ちを感じながら、他の騎士に尋問口調で尋ねた。
他の騎士は答えられなかったが、イングリスは待ってましたとばかりに答えられなかった者を罵倒した。
「ふん、お前達にはまだわかるまい。私たち神の加護を受けた肉体は、傷がたちどころに回復し、運勢に左右される不確定な事象はことごとく有利に作用するのだ。つまり死なない。」