戦場の修羅たち4
こいつらは扱いやすい。
戦場を用意してやれば率先して赴き戦果をあげる。何より、この2人と共にいればデータ収集に困ることはないし、戦闘能力も高いため死ぬことはまずないだろう。
このうえ戦いの過程で勇者共を捕らえれば、貴重なデータになる。
ハルトマンは思惑を巡らせ、一人ほくそ笑む。
錬金術師最大の悲願、幻のアイテム賢者の石の精製をこれで達成できるかもしれないのだ。
「この戦いは魔王討伐以来の大戦となるだろう。私は以前と同じように2人をバックアップするつもりだ。
何より…このアルミエーレを手中にできたのはこれからの戦いにとって大きな備えとなる。」
「参加するものはわかっているのか⁉︎」
アドルフが食い気味にハルトマンに尋ねる。
「まだ全員は揃っていないが、何名か確定しているものはいるな。
まあ魔王討伐で名を馳せた者たちは軒並み参加するだろう。」
「…フフフハハハハハハ‼︎面白い!
我輩は待っていた、待ち望んでいたのだ‼︎このような機会を‼︎戦いの中でこそ我が人生は輝く!そして!」
アドルフは傍らにある大剣バルムンクを掲げ高らかに宣言した。
「必ずや‼︎我ら3人で天下を!世界の覇権を握るのだ‼︎」
「ええ。もちろんですわ。
そういえばアドルフ様、3年前の戦いで魔王を討ち取ったアーサー17世をご存知かしら?」
ギーゼラが語りかける。
あの魔王を討ち取った輝かしい経歴を持つ勇者の話に、アドルフの表情が引き締まる。
「あのエクスカリバーを持つ男か。あいつも戦いに参加するならば激戦は必至だろうなあ。何よりあいつだけでなく配下も猛者揃いだった…確か…」
「そのアーサー17世ですけど、あのあと行方をくらましていたのに…また姿を見せたそうですわ。
恐らくこの戦いに参加するのでは?」
「む、そうか‼︎して戦いはいつから始まるのだ⁉︎」
「あと半年後だ。それまでにここアルミエーレを拠点に少しばかり戦力を整えるのが得策だろう。
しかしアーサー17世か…あの男、なかなか面白い男だったな。」
その時、突然玉座の間の扉が開き、中に兵たちが大勢なだれこんできた。武装した兵士たちはすぐさまアドルフ達を取り囲んだ。
「む!なんだなんだ」
「アドルフよ、王が死んでいるとはまことか⁉︎カルタジャーラを扇動し、戦まで起こすとは‼︎」
恐らくアドルフの声が大きくて城内の兵士に会話が聞こえてしまったのだろう。
兵士たちは殺気立ち、剣を抜いて臨戦態勢に入った。
「この室内であの剣を使えば、城ごと崩れる…貴様とてそのようか愚行はできまい。
さあ!身柄を拘束させてもらうぞ!」
アルミエーレの将軍が剣を携え、突撃すると取り囲んでいた兵士たちも一斉にアドルフ達へと向かってきた。