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勇者たちの鎮魂歌  作者: 砂場遊美
第3章魔王討伐編(過去)
104/209

窮地2

北東部戦線アリゼイユ


魔物の攻勢が勢いを増し、戦線は後退を余儀無くされた。勇者アーロンは前哨戦以降、人が変わったようになり、兵士を駒としてしか見れなくなっていた。指揮や作戦立案も不十分で、軍からは不満があがり、士気は低下の一途を辿った。

他の勇者達も魔物との戦いで次々と倒れ、残ったのは僅かな兵のみとなった。


戦線の向こう、地平線の彼方まで埋め尽くすほどの魔物の軍、騎士アイリを筆頭とするパーティは危機に陥った仲間を救おうと未だ危険な最前線で戦っていた。

アリゼイユ側の生き残りはわずか、亜人種もそのほとんどがキングピサロへと送還されてしまっていた。


「アイリ、グレン、これ以上の突出は危険だ。このままだと救出どころか、自分たちですら危うい。」


白魔導師アンセムが話す。彼も既に数え切れない戦いの中で魔力をほぼ使い切り、満足に仲間を回復できるほどの力が残っていなかった。顔や体には回復しなくても影響がさほどない傷が残っている。

メディチ家特有の白いローブも今や汚れと傷でボロボロだった。


「そうだな…ミイラ取りがミイラになるのは…避けねばならぬ。」


武闘家グレンがそう言ったのと同時に背後からオーガが迫り来る。巨大な体躯、怒りに身を任せて突撃し、右腕をグレンめがけて振り下ろす。


グレンは間一髪でかわし、すぐさま飛び起きてオーガの足の間に滑り込んだ。そして力を溜めて、オーガの下半身から頭の先まで貫くほどの強い拳の一撃をお見舞いした。

その一撃はオーガの脳天まで貫き、大きな音を立ててオーガは倒れた。

砂煙が舞い上がる。グレンも体力の限界が近い。


「アイリ…撤退だ…」


「アイリ、グレンの言う通りにしよう。もう魔物の群れがすぐそこまで迫っている。俺たちだけじゃもう限界だ。」


アンセム達の傍らには先ほど救いだしたアリゼイユの兵が2人いる。だが意識はなく、担いで動き回るのも無理が生じていた。


「仲間を…見捨てるの?」


騎士アイリが囁く。その声色からは恐怖とも悲しみとも取れる感情が込められているような気がした。少しばかり声も震え、泣き出しそうだった。


「アイリそうじゃない!このままだと誰も救えないんだ‼︎2人も助けられたんだ、この状況でうまくやれたんだ。」


「でも、まだ戦線には何人も残ってる…私は最後まで戦う…!

だって、そうじゃなきゃ勇者なんて言えないもの‼︎」


アイリが泣きながら訴える。

明らかに身の丈にあってない鎧や盾、武器も女性用の軽めのものを使用している彼女はお世辞にも強いとは言えない。

補助魔法ですら発動に時間がかかり、実践ではサポートなしには機能しない。


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