麦茶
急に飲みたいと思う瞬間がある。
母さんがいつもヤカンに火をかけて、煮出していた麦茶だ。
独り立ちしてふと寂しさを感じる瞬間。
それを心に抱きかかえながら、ふと見たスーパーの棚にあったお茶のパック。
懐かしいと思って、自然に手が伸びて買っていた。
「…さて、煮出し用だったな」
家に戻ってから、ニクロム線が巻かれている昔ながらのコンロに、水がなみなみと注がれているヤカンを置いて、お茶のパックを中にいれる。
それから、電源を付け、沸騰するまでおく。
沸騰したら電気を止めて、後は好きな濃度になるまで置いておく。
いつもの母さんの作り方だ。
懐かしい、母さんの味をかみしめながら、明日も頑張ろうという気力がうまれる。
やっぱりお茶がないと、どうしようもないようだ。