残り50メートル!
君と僕の距離。
残り50メートル。
季節は夏後半もいいところ。
残暑がきびしい、心はさびしい。
なぜかって?
君が僕の傍にいないからさ。
でも、もう大丈夫。
半年もかかってしまったけれど、今の僕は非の打ち所のないマッチョ人間。
体重は20キロ減。
体脂肪率は10%をきった。
これでもう、僕の進撃を止める要素はなくなった。
唯一気がかりだった君の交友関係も、今のところ大丈夫そうだ。
”君に特定の異性の影はなし”
これは僕の親友パート2であり、学内随一の情報屋”タケト”からの情報だから間違いないだろう。
さて、回想はこれくらいにして、歩を進めますか。
今日こそは、今日こそは君との距離をゼロにしよう。
そして、この立派な上腕二頭筋で君の華奢な体を抱きしめよう!
一歩、二歩、三歩……
順調に歩を進める。
残り40メートル。
いいぞ、いいぞ! 今日の僕は止まらんぞ!!
そう思った刹那、親友のタケトに声をかけられた。
「大樹おはよ!」
「…………」
タケト邪魔だ!
「あいさつなしかい! まぁ、いいけどさ。ところでお前、ほんとに変わったよな。前はオデぶちゃんだったのに、今はまるでボディーヴィルダーみたいだぞ」
「…………」
僕はタケトとの会話をはやく切り上げて、君のもとへ向かいたかった。
「でも、汗っかきなのはあいかわらずだな。お前、汗でYシャツびしょびしょだぞ。着替え持ってきてるか?」
「…………え?」
僕は自分の体を改めて見てみた。
…………完全なシースルー。
こんなんじゃ、君に近づけない。
今日はここまで、また明日。
あぁ、こんなことで進撃を止めることになろうとは。
心も筋肉みたいに鍛えられたらいいのになぁ。
でも、僕は絶対あきらめない!
君との距離がゼロになるその日まで!!