アメ玉降ってきた
アメ玉が降ってきた
黒い黒い雲のなかから
ポトポトとこぼれ落ちてきた
赤青黄色だけでなく
紫とか緑とかオレンジとか
ストライプにみずたま
こっちはグラデーション
たくさん落ちてきた
大人は大きなバケツを
何個も外に置いておいて
家の中にいるというのに
少年少女は小さな小さな手を
そっと傘の外に出して
いくつも受け止めた
両手の上に乗るのなんて
その小さな手じゃあ
むっつくらいが限界でしょう
それでも少年少女は
むっつのアメ玉を両手にして
満面の笑みを浮かべていた
「そんなんじゃあもったいないよ。
頭を使いなさい。
もっとたくさん取ろうとか、
ちっとも思わんのかい?」
「そんなにいらないよ。
これはおかあさんの、
これはおとうさんの、
おねえちゃんのに、
こっちはおじいちゃんとおばあちゃん、
あまったひとつはぼくのだよ!
ほらね、ちょうどでしょ?」
大人は困り顔
バケツの中のアメ玉は
不安そうに揺れるばかり
外ではまだアメ玉が
ポトポトリと降り続いていて
いっぱいになったアメ玉が
バケツからひとつふたつ
こぼれ落ちていく
やがて
アメ玉がやんだ頃には
太陽が燦々と
地面を照らしていた
アメ玉はひとつふたつ
溶けていく
どんどん溶けてゆく
大人はあわてて
重いバケツを抱え
日かげへ運ぼうとするけれど
光は不思議なアメ玉を覗くように
いつまでもどこまでも追いかけてくる
日かげへ着いたときには
もうほとんど形が崩れていた
大人は
混ざり合って
何色とも言えない
それを見つめて
ただ立ち尽くしていた
その奥で
少年少女は手をつないで
帰りの道を歩いている
むっつのアメ玉は
もうその手に握られていない
「おいしかったね」
「そうだね。おいしかったね!」
形はなくとも
あの甘さは消えずに
大切な人と共有されてゆく
大人のバケツは空のまま
重たそうに
底に溜まっていた
もう掬い上げることもない
名前のない甘さが
ただそこにあった
ご覧いただきありがとうございました。
アメ玉むっつでじゅうぶん。
誰かに届きますように。




