9. 真剣な話し合い
ミーリア様が部屋を出て、もう十分に離れただろうと思うだけの時が過ぎたら、小声だけど深刻そうな雰囲気でラミアたちの話し合いが始まった。
「まさかミーリア様がわざわざここに来るとは思わなかった」
「押し付けられただけで、もう何の関心もないのかと思ってた」
「私も、役立たずには関心がないから、世話する面倒を押し付けてきただけだと思ってた」
「いや、基本的には上位の人たちの認識はそうじゃないのかな。
役に立たないなら自分たちが関わるまでもない、と」
「だけど、そのまま完全に放っておかれる訳ではなくて、私たちがきちんと世話しているかどうかは監視している、っていうことかな。」
「でもそれだと、私たちって今まで目立つところのないグループで、特に誰にも気にされていなかったけど、これからは上位の人たちの目がいつでも光っているということになるの?」
「ええっ、それってかなり嫌。 疲れる」
自分たちが意図せず、僕のせいで、周りから注目を集める存在になってしまったことに気がついた様だ。
僕は人間だから、ラミアたちの中では嫌でも注目を集めるのは分かりきっているから別に今更だけど、このグループにとっては大きすぎる変化なのだろう。
「それよりも、もっと重大なことがあるよ」
金髪リーダーさんが、今までに僕が見たことがない強い口調で言った。
「この人間が、本当は役立たずじゃなくて精を出せることを、絶対に他の誰にも悟られないってことだよ」
やっぱり珍しいのかな、その強い口調に驚いたみたいで他のラミアは沈黙したけで、一人がおずおずと声を出した。 黒髪さんだ。
「怒られない為に?」
「違うよ。」
ピンク髪さんが、周りの注目を浴びるたり、上位の人の目が常に光っているというのが嫌だからか、今までは僕の本当のところのことを隠す方向だったのに違うことを言い出した。
「少しは怒られるかも知れないけど、役に立つなら上の人には利益だから、そんなに怒られないんじゃないかな。
役に立つことを知らせれば、私たちはお役御免で前と同じになれるんじゃない」
金髪リーダーさん以外のラミアは「なるほど」とうなづいている。
金髪リーダーさんはそんな仲間に怒る様な、絶対に引かないという調子で反論した。
「役に立つことを知らせるなんて、絶対にダメ。 そんなこと、私は絶対に許さない。」
他のラミアたちは、「許さない。」という言い方に少しムッとした様だ。
「1対4だよ。 何でそんなに意固地に言うの?」
「あなたたちは人間の精を得てないから解らない。
得てみたら分かるよ。
本当にすごいんだから、それを得る機会を手放すなんてあり得ない。」
金髪リーダーさんは説得したいと言うより、分からず屋に言い聞かせる様に主張を続ける。
「この人間が役に立つことを他に知られたら、もう私たちは人間の精を得られる機会は無いんだよ。
隠して私たちだけの秘密にしていれば、私たちはそれを得ることができるんだよ。」
金髪リーダーさんが、そう強い口調で言うと、他のラミアたちもみんな黙って少し考えているみたいだった。 すると金髪リーダーさんは優しい口調に変わって、言葉を続けた。
「私はさっき実際に得てみて、上の人が人間を独占している理由がよーく解ったよ。
みんなも得てみれば絶対に解るよ。」
他の四人のラミアは、ミーリア様が不意にやって考えることが中断してたこと、人間の精を得た後のリーダーの様子を思い出した。
人間の精を得てみたいというラミアの本能的欲求と、面倒なことを避けたいという気持ちが心の中でせめぎ合っている様だ。
「リーダーのさっきの様子と今の言葉から考えると、本当に凄いんだと思うけど、きっと隠して世話するのって、とても大変だと思うよ。
まあ、普段おっとりしているリーダーが、あれだけ強い口調で言うのだから、余程のことなのだろうとは思うけど」
「でも、他のみんなの注目をずっと浴び続けることになるんだよ。 それも上位の人たちの目も常に光っている。
その中でバレない様にするのは、きっととても大変」
注目や面倒を避けたいという気持ちは強いらしく、金髪リーダーさんの旗色は悪いままだ。
僕は自分のことだけど、口の挟みようがない。
気持ち的にはこの五人といる方が他よりは気楽なんじゃないかと思うのだが、もうすでにかなりの迷惑を掛けている自覚もある。 僕だけのせいという訳でもないとは思うけどさ。
「じゃあさ、もう一人この人間から精を得てみて、その一人の意見が変わらなかったら、私もみんなの意見に従うよ」
えっ、急にそんな風に話を振られても、期待に添えるとも思えないのだけど。
プレッシャーに弱いのは昨日からさんざ体験済みなんだけど。
僕の困惑をよそに、話はまとまっていく。
「じゃあ、誰がやる?」
短髪さんが場を仕切りだした。
「私やってみたい。
ミーリア様が言ってた「水を飲ます」というのやってみたいから。」
青髪さんが即座に立候補した。
「早いもの勝ちって訳じゃないけど、まっ、良いか。
やってみな。 もし失敗したら、他と交代だからな」
さすがに直接自分に関わることだから、ちょっと口を出す。 弱気がしっかりと顔を出してしまった。
「失敗って何?
それに急にそんなこと言われても、出来るか分からないし」
「水に毒混ぜちゃう可能性があるだろ。
あ、大丈夫、失敗して混ぜちゃった程度の量なら軽く意識無くす程度ですぐ覚めるだろうから」
「で、ミーリア様の言う通りなら、口移しの水飲めば出来るはず」
えーと、確信はないのね。 それに拒否権も。 僕の弱気な意見は全く考慮されず、どんどんと話は進められていく。
僕は、どうなることかと不安でドキドキしていたのだがどうにもならない。 他の金髪リーダーさんを除く3人が、なぜか囃し立てる中、青髪さんはちょっと得意そうな顔をして、僕に口移しで水を飲ました。
その水を飲んだ瞬間、心臓がドクンと跳ね上がり、自分の下半身が大きく漲ってきたことがわかる。
僕が「うわっ」とびっくりして慌てているうちに、僕に口移しで水を飲ませた青髪さんは、その僕の慌てた様子で事情を察して、納得した様な嬉しそうな顔を見せた。
僕は他のラミアにも手伝われて、一度着た服をまた脱がされると、少しの行為でまた精を放出することになってしまった。
そんな自分に驚く気持ちが最初にあったのだけど、すぐに違和感を感じた。 あれっ、さっきと違う。
さっきは、女性経験の全くなかった僕が、ラミアとはいえ少なくとも上半身は女性に見える人に相手をしてもらって精を放出したので、何というか喜びというか、気持ちの良さというか、嬉しさも、それで良いのかと思わなくもないのだけど、感じてしまった。 ところが今回は、そういう感覚が無いばかりか、生命力を吸われた様な疲労感だけが体に重く残る。
こ、これはダメなやつだ。
そんな僕の感覚とは関係なく、やはり僕の精を得た青髪さんは、最初の金髪リーダーさんと同じ様に尻尾の先までピクピクさせている。
それを見ている残された三人のラミアの目はさっきよりやばい。
青髪さんは少ししてやっと声を出した。
「私も解った。 絶対に周りに教えちゃダメ!!」
僕が役立たずじゃないってことは、絶対に秘密にすることが決まった。
でも僕はそれどころじゃなかった。
これはダメだ。 やばい、やばい、やばい。




