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気がついたらラミアに(なろう改訂版)  作者: 並矢 美樹
ラミアの捕虜

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8/12

8. 世話の仕方を教えないと

 今朝の私は機嫌が良い。


 ラーリア様が選んだ人間は、当然のことだが私が面倒をみることになった。 さすがにラーリア様が好き放題に精を搾り取った後だから、私の部屋に連れて行き、物を食べさせたりしただけで、私が精を得ることは出来なかった。


 しかし、人間を抱いて眠るのは、それだけでとても気持ちが良い。 ラミアは眠ると体温が下がってしまい朝動き出す時が辛いのだが、人間は恒温動物だから抱いていれば常に暖かく、私の体温も保たれ快適だ。 それだけで、私は今、気持ち良く朝を迎えている。


 機嫌が良い私は、ふと思いついたお節介をしようかと、通路を隔てて反対側の部屋にいるミーレアに声を掛ける。 私が都合が悪い時には私に替わってこの人間の世話をするのはミーレアの役目だ。


 「ミーレア、ちょっとこの人間、見ててくれる?」

 「はい、いいですけど、昨日の で何か用事ってありました?」

 「いや、ふと思いついたんだけど、ナーリアたちって人間の面倒をみたことないはずだから、どうなっているか見て来ようかと思って」

 「ああ、そうですね。 ミーリアさん、良く気がつきましたね。 私が見て来ましょうか?」

 「気づいちゃったら気になるから、私が見て来るよ。 あんたに貸・し・た・げ・る」

 「あは、それじゃ暖まるかな。 まだ使えないでしょうから」


 私は人間をミーレアに任せナーリアたちの部屋にやって来た。

 ドアをノックし、声を掛ける。

 「ミーリアよ。 ちょっと邪魔していい?」

 「はいっ!?、ミーリア様ですか。 今開けます。 ちょっとお待ちください」


 バタバタ、ゴソゴソと中でグループメンバーたちが居住まいを直しているのか、慌ただしく音がする。


 「ミーリア様よ。 ほら、あんたはこっちできちんと立って」


 ああ、私がこんな朝の時間にわざわざ訪ねてくれば、何事かと焦るだろうなぁ。 私がナーリアたちの立場だった時なら、絶対に狼狽えたな。 そう思うと中から聞こえる喧騒も微笑ましい。 顔が緩んでしまうのが自覚できる。


 「お待たせしました。 どうぞ中にお入りください」

 ナーリアが扉を開いて部屋に招き入れてくれた。 メンバーと人間は部屋の両側に並んで立っていた。


 「ああ、そんなに緊張することはないわよ。 私も座って寛がしてもらうから、あなたたちも座って寛いでくれて構わないわ。」


 ナーリアたちと人間が座ってから私は話を続けた。

 「さて、あなたたちは人間の世話をするのは初めてのことね?」


 「はい、人間に近づくことから初めてでした。」

 ナーリアが代表して緊張した声で答える。


 「人間の捕獲に同行するのも今回が初めてだったのかな?」

 「はい。 私たちの収穫担当区域が今回の捕獲の近くでしたので、荷物運びに呼ばれました」

 「それで偶然この人間を捕獲した訳ね。 大手柄ね」


 緊張を少しでもほぐしてあげたいと思い、私は昨日のことを褒めてあげた。

 しかし、ナーリアたちの顔は固いままだ。 うーん、仕方ないこのまま進めよう。


 「で、この捕まえた人間が残念ながら役立たずだったので、捕まえた君たちに褒美として与えられた訳だが、役立たずだからといって世話をしない訳にはいかないのは分かっていますね」

 「はい、もちろんです」

 「そう、人間には、『逃げたり・私たちに危害を加えようとしない限り、悪いようにはしない、食事も与える』と告げてあります。 そこに例外はないわ」


 ナーリアたちは黙って聞いている。


 「で、この人間の世話を任されたあなたたちだけど、人間の世話の仕方を今まで誰かに教わったことはないと思うのだけど」

 「はい、まだありません」

 「だろうと思ったわ。 そこでちょっと心配になり、私がここに見に来たということなのよ」


 ナーリアたちは、「ああ、そういうことか」と納得し、安心したように少し肩の力が抜けた。


 私は改めてナーリアたちと人間を観察してみた。

 ナーリアたちはもしかしたら昨日からの慣れない物事に疲れているかもしれないと思っていたのだが、とても元気に見える。

 人間は予想外に元々の服を着ていた。 ここに連れてこられた時には布一枚だったはずで、ナーリアたちがわざわざ取ってきて着せたのだろう。


 とりあえずそこには触れずに話を始める。


 「まずは食事だけど、人間にもきちんと食べさせたの?」

 「はい、世話を任されたということは、まず第一に食事は与えなければならないと思い、私たちと一緒に食事をさせました」


 「人間の食事はラーミアとは少し異なるのだけど大丈夫だった?」

 「はい、種子を食べずにその周りのカスの部分を食べることに驚きましたが、この人間が言うには十分な量を食べたとのことです」

 「そう、それなら良かったわ。 人間には食べられないラミアの食べ物も多いのよ。 人間が食べれる物をきちんと用意してやる様に、今後も気をつけてあげなさい。 水分はどうしたの?」

 「私たちと同様にカップを用意し与えました」

 「ああ、この人間は役立たずだから、それでも構わないかもしれないわね」


 私がちょっと考えてから答えたため、ナーリアたちは心配そうな顔をした。

 「ええと、何か違っていたのでしょうか?」

 「そうね、普通は人間には私たちが口内に出せる水を、口移しに与えるのよ」


 ナーリア以外の者が初めて口を出した。

 「口内に出せる水って、毒霧を吐く時に使う水ですか?」

 「そう、毒霧を吐く時はそれに牙から出る毒を混ぜて吐き掛ける訳で、それはラミアは誰でも小さい時から練習しているから出来るわよね。 まあ、子どものラミアは口内に水を出せば毒を混ぜるのが習い性になっているのだけど、人間に与える時は毒は混ぜないの。 毒を混ぜなくともラミアが口内に出す水には人間にとっては催淫成分が入っているわ。 まあ、精を出せる時にはいつでも出せる様にする為の技ね」


 私は丁寧に説明をしてあげる。 そのためにここまで来たのだ。


 「えーと、これからは私たちも水分はその様にして与えないといけませんか?」

 「まあ、この人間は役立たずだから別にそうでなくても構わないと思うけど、あなたたちがこれからの練習としてやってみても構わないわ。」

 ナーリアたちはチラチラと顔を見合わせている。なんとなく自分の昔を思い出す。


 さてと、気付いたことを質しておこう。

 「ところでこの人間に元々着ていた服をわざわざ持ってきてやったのね」

 「はい、すみません、何か問題がありますでしょうか?  これから私たちはいつも通りに収穫に行くので、それに連れて行くには必要かと思ったのですけど」


 私は不意を突かれた。  確かにナーリアたちがこの人間の世話をずっとするなら、そういうことも考えないといけない。 でも先にナーリアたちの今日の予定の勘違いから教えてあげよう。


 「ああそうか、あなたたちは知らなかったのね。 人間の捕獲に行ったら、次の日は仕事は免除されるのよ。 だから、今日は君あなたたちは収穫に行く必要はない。 代休というか、ちょっとしたご褒美ね」

 「そうなのですか。 ちょっと嬉しいです」


 私たちに対するミーレアたちのように、ナーリアたちにも補助をするグループを決めようかと少し考えた。 しかし、この人間は役立たずだったので、捕らえた褒美として与えられたもの。 功績がないものを補助に付けるのは問題がある。 とりあえず棚上げして、あとでラーリア様に相談しよう。


 「とはいえ、そうね私も今言われるまで気が付かなかったけど、あなたたちが任されたということは、この人間は今までにいた人間たちとは違い、あなたたちと行動を共にしなければならない訳なのね。」

 「えーと、普通の今までの人間はどうしていたのですか?」

 「人間を外に出す必要はなかったわね。 私たちのような歴代のミーリアが主に世話することになっていたのだけど、私たちが外に出る時にはミーレアが世話をする決まりになっている。 今も私の担当した人間はミーレアが見ているのよ」


 違う一人が質問してきた。

 「今までも役に立たない人間もいたと思うのですけど、そういう人間はどうしていたのですか?」

 「うーん、私は今まで最初から役に立たなかったという人間は知らないわね。 そもそも捕獲してくる時に役に立ちそうにない人間は捕獲しないでしょ。」

 「途中から役に立たなくなってしまったというのはいたのですか?」

 「それはほとんどの人間がそうなってしまうのだけど、そうなった時には元気もなくなっていて、すぐに死んでしまっていたから。 私に参考になる知識はないわ」

 「そうですか。 ミーリア様でもこの人間の様な例は知らないのですか」


 今更の様に考えてみれば、私は普通の人間、普通に役に立つ人間しか見たことがない。

 今回の様な役に立たなかった人間をどう扱えば良いかは私にも具体的なことは何もわからない。


 「そうね。 どうしたら良いか、手探りで考えていかなければいけないわね。

  例えば、収穫にこの人間を連れて行けば、少なくとも一人は見張りをしなければならない。 すると収穫量が減るかもしれない。

  色々とこれから問題が出てくるかもしれないわね、いえ、出て来るわね。 何か困ったこと、相談したいことが出来たら、すぐにためらわずに私に言ってきて良いわ。 ラーリア様にもこのことは伝えておくわ」


 ナーリアたちは今まで前例のないこと、結構大変なことを任されたのだと考えた様で、また緊張した面持ちになってしまった。 もう少し柔らかい言い回しを考えるべきだったかと思ったが、もう仕方ない。

 軽く冗談でも言って戻ろう。


 「そうそう、私はお前たちが慣れないことをして今朝は疲れた顔をしているかと思っていたのだけど、みんな元気そうでちょっと驚いたわ。 大したものね」


 私は軽口で言ったのだが、ナーリアたちはビクッとして、オロオロと言い訳を始めた。

 「あの、逃げられちゃいけないと思って、寝る時にみんなで押さえつけて寝たんです。 そうしたら暖かくて気持ち良く眠れちゃって」

 「ああ、そうね。 人間にくっついて寝ると暖かくて気持ちいいわよね。 私もとても好きよ」


 今朝の自分が機嫌が良かった訳でもあるのだから、私は心から同意してあげた。


 「そうよね、役立たずでも寝る時にはとても役に立つわね。 世話を任された君たちの特権よ、それは。 その特権はしっかり楽しんで構わないわ。

  それじゃあ私は自分の部屋に戻るわ」


 ナーリアたちの部屋を出て、まずはラーリア様への報告と相談、そして当分の間は気にかけてやらないといけないな、と考えた。 あと他の者たちにもナーリアたちに便宜を図ってやる様に伝えないと。


 思っていたより長くナーリアたちの所にいたので、きっとミーレアが喜んでいるだろう。


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