5. 自分だけだった理由
最初の5人がこの部屋に呼ばれて来た。
隊長が、選んだ友の上から声を掛ける。
「お前たちが捕まえた人間だけど、どうも役立たずのようだ。
役立たずをこの部屋に置いておいても仕方ない、捕まえたお前たちに任せるから好きに使って良いぞ。
連れて行って良し」
それだけ言うと、完全に興味の対象外となり意識から消去されたようだ。
最初に会ったリーダーはナーリアというらしいが、五人は明らかに顔色が悪い。
自分たちが捕まえて来た僕が役に立たなかったことは、とんでもない失態だったのだろうか。
「了解しました」
五人は姿勢を正し礼をしたが、隊長はもう見てもいなかった。
「付いて来て」
リーダーにそう言われ、とにかくこの場にいるのは身の危険を感じるので、彼女たちに連れられて静かに部屋を出る。
大部屋を出たところから、コソコソと彼女たちの話し合いが移動しながらされる。
「どうする?」
「任されちゃったら、もう私たちの部屋に連れて行くしかないじゃん」
「そうよねぇ、流石に任された途端に外に放っぽり出したりしたら、また誰かに何言われるか分からない」
「とにかくここで話しているのはまずいよ。 部屋に行くよ」
このグループの部屋は巣の入り口に近いと思われる小さな部屋だった。
中に入ると彼女らはしっかりと扉を閉め、扉から一番遠い位置に集まると一斉に小声だけど凄まじい勢いでしゃべり出した。
「うっわ〜、ほら、だからサクッと噛み付いておけば良かったのよ」
「そんなこと言ったって、誰も噛み付こうとしなかったじゃん」
「何で誰も忘れちゃてて気がつかないのよ。 役に立たないからって呼ばれて、どうなるかと思ったわよ」
「そう言っているあなただって全く忘れてたじゃない」
「私たち人間捕まえたのなんて初めてだし、私たちが捕まえることなんて考えてもみなかったから、パニクっていたのよ、みんな」
「いや、でも、この人間に根性があれば、どうにかなったんじゃないか」
今までの事を考えてみると、ラミアが人間を、それも男を襲うのは、人間の男から精を搾り取ってエネルギーを得るためとみて確かだろう。 うん、今までの知識でもラミアってそういうものだよな。 襲われてパニクって忘れてたけど。
でもって、僕は捕らえられる時に噛みつかれなかったのだけど、それが何だかとても特別なことらしい。 話を横で聞いていると、どうもそんな気がする。
しかし、僕の根性がと言われると、そんな無理を言われても困る、と思う。
僕は何となく幾らか気易くなった気がするこの五人に疑問に感じた事を訊ねてみた。 だって、隊長や隊長と一緒に入って来たラミアたちに比べれば、この五人はずっとプレッシャーというか迫力がない。 楽に接することが出来る。
最初に会ったんだし。
「ちょっと訊いても良いかな。
なんか今の話聞いていると、僕が役立たずだったことと噛み付かなかったことに関係がある様な気がしたんだけど。 そこに関係ってあるの?」
人が好い(ラミアだけど)のか、答えてくれた。
「噛み付いて注入する毒って、気絶させるだけじゃなくて、目が覚めると私たちに対して強力に反応する催淫剤にもなっているの。
すっかり忘れていたけど」
「そのせいか!! それで僕だけが役に立たなかったのか」
つい大声をあげてしまった僕は、凄い勢いで引きずり倒され口を塞がれた。
「声が大きい」「静かにして」
「ごめん、つい大声が出ちゃった。気をつけるから」
小さな声で真摯に謝った。
「でもさ、僕だけ勃たなくて、本当に焦ったんだよ。 役立たずとして処分される運命かと思って。
びんびんに命の危機を感じていたんだからな」
「だから、殺したりなんてしないって」
「はーあ、僕だけだったのは、そんな理由があったんだ。
僕、悪くないじゃん」
「そんなことない。
最初に『痛いことは嫌いだ、噛み付かないでくれ』と言ったのは、あなた」
そうでした、冷静なツッコミです。 そこからこの事態が始まったのでした。
それはともかく何となく、この五人のラミアたちと共犯関係ができた感じになってきた。
ちょっと沈黙が支配した後、一人のラミアがボソッと言った。
「ところであなた、本当に不能じゃないよね。」
「そんな訳、あるかい!!」
また声が大きくなり、即座に口を塞がれた。




