4. やばい、無用の者になった
ラミアの集落というよりは巣は、山の麓の洞窟だった。
一つの入り口から中にトンネルが奥と左右に広がっていた。
僕は一応意識のないフリをしながらも薄目を開けて、辺りの様子を伺っていた。
疑われる様なことをしないと約束はしたが、逃げ出さないとは約束してないからね、やはり命は惜しい、どうにかしたい。
しかし、その望みはないと嫌でも思い知らされた。
左奥に向かったトンネルのどん詰まりの部屋に僕は降ろされ、その部屋の出入り口にはぶ厚い木の扉があり、しっかりと閉められた。 扉には監視用の小窓というか隙間があり、外には見張りがいる様だ。 部屋にはごく小さい明り採り兼空気孔だと思われる小さな窓というか穴があるだけ。
とても逃げられない、チャンスを待たねば無理だ。 チャンスなんてあるのかな。
部屋の中には僕の仲間たちも全員、10人とも転がっている。 まだ誰も意識を取り戻してない。 確かめてみる訳にはいかないけど、扉の外からきっと監視されているだろうから、僕も固い床の上で横たえられたままの格好でじっとしている。
同じ格好でじっと転がっていると体が痛くなってきて、動かずにいることがとても辛くなってきた。 もう我慢できないと思い始めたところで、仲間の一人が少しだけモゾモゾと動いた。
それに気が付いた僕は、少しだけ待ってから、ほんの少し体を動かした。 うーん、滞っていた血が回る気がする。
そんな風にほんの少しモゾモゾしていると、あっちこっちでモゾモゾする気配が広がった。
どうやらみんな次々と意識を取り戻しているらしい。
目の前に転がされていた友人の目が開き、視線が交わった。 声を出さずに口が動いた。
「今、どうなってるの?」
「捕まって監禁されているみたい」
「捕まったって、何に捕まったの? 別にどこか縛られている訳でもないみたいだけど」
そう口を動かして、体を大きく動かそうとした友人に、僕は慌てて口を動かし、その動きを止めた。
「動くな。 捕まえたのは、ラミア。 監視されている。 不用意に刺激しない方が良い。何をされるか分からない」
友人は一瞬ビクッとして、急に意識が覚醒した様だ。
「そうか、ラミアに捕まったのか。
焚き火の側で寝ていて、何かに襲われた気がするけど、そこから記憶がない」
「僕は少し離れた場所に一人いたから、ラミアに襲われたことだけは分かった。
すぐに気付かれて、僕も意識をなくしたけどね」
あまり自分のことを話すのも、何だか危険な気がして、僕は自分に起ったことは隠すことにした。
なんとなく、あちこちでこんなやり取りがされている感じがする。
ダメだなこりゃ、意識が戻っていることは監視にはバレバレだろう。
案の定、扉の外から声が掛かった。
「囚われの諸君、意識が戻っていることは分かっている。
普通に動いて良いから、話を聞いてくれ給え」
その声を聞き、僕たちは皆起き上がり、それぞれ楽な姿勢で床に座った。
その声は隊長さんだと、僕には分かった。
流石にその声に誰も反抗しようとはしない。
「そんなに緊張しないでくれ給え。
我々は君たちを危害を加えようと思っている訳ではない。 その点は安心してもらって構わない。
我々の言う通りにしてくれれば、悪いようにはしない。食べ物も準備してあげるし、辛いことをさせるつもりもない。
逃げたり、我らに危害を加えようとさえしなければ、安全を保障しよう」
その言葉をそのまま信じる気にはとてもではないがなれなかったが、武器も何もなく、閉じ込められた現在の状況では、信じたフリをして、その言葉に従うしかない訳で、みんな沈痛な面持ちで黙り込んでいた。
「さあ、理解できたかな。
理解できたら、まずは一人づつこの場から外に出て貰おうか。
言っておくけど君たち一人に対して、私たち二人がつくから、絶対に逃げられない。
では、扉を開けるから順番に一人づつ出て来なさい。」
誰が一番に外に出るか、僕たち仲間内に一瞬の緊張が走った。
最後に入れられた僕が扉に一番近い位置に寝かされていたから、嫌だけど最初に行かねばならないかと考えていたら、襲われた時の見張り番だった友人が、責任を感じていたのか、立ち上がって出て行った。
「良し、次。」
少し負けた気がしてた僕は、二番目に立ち上がった。
出て行った時、僕に付いた二人のラミアは今までとは違うラミアだった。 僕が捕まったラミアたちよりずっと体格が良く、体にメリハリがある。
捕まった時は一瞬、戦って逃げられないかと考えたのだけど、今度ははっきり分かる、絶対無理と。
隊長さんをチラッと見たら、もっと強そうだった。 それと共に何故かとても色っぽい。 強そうだけど、女性の魅力度も高いって、どうゆうことよ、ラミアだけどさ。
二人に連れて行かれたのは、近くの川から引き込んだ水場だった。 ここで体を綺麗にしろと命令された。
やっぱり殺されて食べられる運命なのかと、殺しはしないと言われていたけど、ちょっとその準備かと腰が引けてしまう。
着ていた物を全て脱がされ、裸で水の中に入らされた。 頭の天辺から足のつま先まで、入念に洗う様に指示され、水場から出ると体を拭くための大きな布が用意されていた。 布で体を拭くことは許されたのに、脱いだ服は回収されてしまい、着る物は準備されていなかった。
裸のままはなんとなく不安なので、仕方がないから、体を拭いた布を巻きつける。
その恰好で二人に促され、今度は入口を真っ直ぐ奥に入って行き、突き当りの部屋に二人と共に入った。
今度の部屋は監禁された部屋とは違い、ずっと広く、床には毛皮が何重にも敷き詰められていた。
その部屋の奥の方に行くと
「座って良い。 少し待つ」
そう僕に声を掛け、二人も僕の隣に尻尾を横に投げ出して座った。
ふーん、ラミアってこんな風に座るんだ。 今までは立っているところしか見ていなかったから、座り姿は珍しい。 それに何だか膝はないけど太腿の部分はあるみたいな感じ。 座り姿が全然不自然じゃない。 蛇みたいにトグロ巻く訳じゃないのね。
こんな事を考えながら、頭の片隅では、これもきっと現実逃避だなと冷静に自分にツッコミを入れていた。
僕の仲間たちが全員揃い、ちょっとすると、隊長さんとそれに近い感じの強そうで色っぽいラミアが合わせて十人部屋に入って来た。 僕たちは立たされた。
「それじゃあ始めようか。 さて私はどれにしよう」
そう言うと隊長さんは、僕たちの股間を手で一人一人触って行き、
「よし、これにしよう。 強そうだ」
仲間の一人の手を引いて少し離れ、仲間の布を取り去り、自分の服も脱いでいった。
その光景をびっくりして見ているうちに、別のラミアが同じ様に股間に触れて行き、また一人を連れて離れた。
そうやって次々に引っ張られて行き、僕だけが残った。
「今回は一人多かったから、君たちも残りを楽しみ給え」
隊長さんだけでなく、友たちを連れて行ったラミアたちは、それぞれを相手にしている。 個室に別れるわけじゃないのか、ま、個室となると危険だからなのか。 目の前に繰り広げられる光景に、また完全にテンパってしまった僕は、そんなことを考えていた。 現実逃避だ。
そうだった、完全にテンパって忘れていたが、ラミアは精をエネルギーとする魔物だった。
確かに殺されはしないけど・・・・。
一瞬意識が飛んでいて、気がつけば僕も巻いていた布を取り払われて、担当になっていた二人に加えて何人かのラミアに囲まれて身体中触られている。
「えっ、あなた何で勃ってないの?
とりあえず私の胸触ったり、吸ったりしても良いから勃ててね。 そうじゃないと始まらないから。」
いやいや、無理だから。
確かにおっぱいあるけど、ラミアだよ。 蛇の尻尾見たら、とてもじゃないけど萎えるでしょ。 恐怖が先にきて縮むから。
「大丈夫、私の技術で」
知らないラミアが自慢の技術を僕に駆使してきた。
人間の女の子相手なら、興奮間違いなしの嬉しい状況だけど、ラミアだよ。 恐ろしさというか怯える気持ちの方が強くなって、余計に縮まるって。
そのラミアは一生懸命奮闘してくれているみたい、みたいというのは、恋愛経験もなく、金銭的な余裕もなかったから、男女間のことの経験がないから、まともに判断できないからだ。
それでもこの状況で、悪いけど、いや焦るけど、その奮闘が結果をもたらしはしない。
「下手くそ、私が替わる」
別のラミアが交代した。
確かにテクニックが前とは違う気はするのだが、無理なものは無理。
「何で勃たないの?」
「ほら、お前だってダメじゃんか。」
いや、僕に言わせれば他の連中なんで勃ってるの? 何で精を出せてるの? 人じゃないよ、ラミアだよ。
でも、もしかして、勃たないと、出せないとやばい?
無用の者として処理されかねない?
その可能性は結構ある気がする。
やばい、やばい、何とかしなきゃ。
下は見るな、上半身だけ見れば、尻尾さえ見なければ人間と変わらない。 頑張れ、自分。
焦ると・・・、余計に気配さえなくなった・・・・。
僕に群がっていたラミアたちは諦めムードになった。
「ラーリアさま、この余り者、使えないんですけど」
隊長の名前はラーリアというらしい。
「ん、あったと思ったが、玉無しか?」
「いえ、玉はちゃんとありますけど、勃ちません。」
ラミアとはいえ、胸があるから女性だろう。 女性にそう明け透けに言われると、ちょっと堪えるものがあるなあ。
進退窮まった、というか、もうずっと前から窮まっているけど、完全に諦めだね。
えーと何度目かな、こう思うのって。
「玉はあっても、不能者か。
役に立たないな。
えーと、そいつは誰が連れてきたんだ。」
「ナーリアたちです。」
「ああ、あの最後に連れられて来た奴か。
それじゃあ、連れて来たナーリアたちを呼んで、呉れてやれ。
ここに置いておいても仕方ないからな。」
「了解です。」
どうやらすぐに殺されることはないようだ。
ちょっと安心した。




