2. 捕まった
「に、に、に、逃げて来たんですか?」
目の前にいたラミアは、焦ったように声を掛けてきた。
ラミアって普通に喋るんだ。パニックになっている僕は、とっさにそんなことを考えた。
「わ、わ、わ、私に見つかったからには、も、も、も、もう、無理ですよ。 逃げられません」
ラミアの方も咄嗟のことで、半分パニックになっている。 これならもしかしたら。
ラミアと正面から向かい合う形になった僕は、必死で考える。 左右どちらかに走って林に逃げ込めば・・・。 いや、走り出そうとしたら、あの蛇の尻尾が襲ってくるだろう。 でも一撃避けれれば、行けるんじゃないか。
「横に走って逃げようとしても無駄です」
僕の目の動きで察したのか、ラミアはそう言ってきた。 くそっ、思ったより冷静なのか。
「わわわ、私の尻尾の動きは速いですし、あなたの剣では傷もつきませんから、避けることも去なすことも難しいでしょう。 それにもう私の仲間もあなたに気づいているし、戦ったりして騒げば、向こうにいる仲間にも気付かれますよ」
パニクっていた僕は目の前のラミアしか見ていなかったが、言われて周りに気を配れば、他にも何かいる様な気がする。 でも怖くて目の前のラミアから視線は外せない。 やはり完全に終わった、どうしようもない。
そもそもラミアなんて騎士団の討伐対象で、それだって討伐できたなんて話はほとんど聞いたことないし、僕のようなまだ狩人にもなっていない半人前が太刀打ちできる相手ではないのだ。
諦めて僕は普通にラミアにしゃべった。開き直りというのかな、どうにもならないなら怯えてもしょうがない。
「もう逃げない。 完全に降参する。 言うことをきくよ」
目の前のラミアは明らかにホッとした様子で僕の言葉に応えてきた。
「それは良かったです。 私も戦いとか、したくなかったですから」
次に何を言えば良いのか考えているのか、少し無言で見つめあった後、目の前のラミアは言葉を続けた。
「それでは剣を鞘ごとこちらに投げて、とりあえずその場に座ってくれますか?」
言われた通りに、どの狩人も使うありふれた剣鉈を鞘ごと腰から外しラミアの方に投げ、地面に腰を下ろした。
目の前のラミアがそれでも警戒してか僕から目を外さないようにしながら、僕が投げた剣鉈を手に取ると、それが合図であったかの様に、他のラミアが現れた。
「これで大丈夫。 ふう、どうなるかと思った」
「いやあ、大手柄ね。」
「すごいぞ、一人で捕まえたなんて。」
「うん、スゴイ。」
おいおい、こんな近くに他に四匹(四人というべきか)もいたのかよ。 逆らっていたら、瞬殺だったな。 ま、これからどうなるか分からないけど。
「何よぉ、今になって出てきて。 もっと早く出て来てよ。」
「えーっ、だって武器持っている人間の前に出ていくなんて、怖いじゃない。」
「私だって怖かったわよ。 何で助けてくれないのよ。」
「それは正面になってしまった不運。 それに一応このグループのリーダーなんだから。」
「リーダーって、それも私にみんなが押し付けただけじゃん。」
「それでもリーダーはリーダー。」
はあ、怖かったから出てこなかったって、目の前のラミアも僕のことが怖かったって、まあ戦いば誰でも怖いけど、ラミアってスゴイ強いんじゃないの? そういえば、よく見ると、ここにいるラミアたちは体も細いし、とても強そうには見えない。
「油断しないで、まだ武器を隠し持っているかもしれない!!」
後から現れた中の一人が(これだけ普通に会話しているのを聞いちゃうと、やっぱ一人だよな)、僕のことを警戒して、他の四人に注意を促した。
最初の、目の前のラミアは、少しはっとして、バツが悪そうな感じで、また僕に話しかけてきた。
「剣の他に武器を持ってる?」
「いや、今は持っていない」
「調べさせてもらってもいい?」
いや、普通勝手に調べるだろう。 律儀に了解を取るのがラミアのやり方なのかな。
「構わない。 抵抗はしない」
「抵抗しないって、ほら、調べてよ」
「いや、ここはリーダーの仕事だろう。私たちは警戒しているよ」
「もう、何でも私にやらして」
「だって、怖いじゃん、まだ。 もしもってことがあるかも」
「私だって怖いよ」
リーダーと呼ばれた、最初の、目の前のラミアは、怒ったような拗ねたような顔をして私に近づいてきた。 私は自分でもこんな時にびっくりなのだが、何だか可哀想な気になり声を掛けた。
「大丈夫だ。 武器は持っていないし、何もしない」
「動かないでね」
最初、上半身を念入りに触られ、次に脚の方を触られた。 靴も脱がされ念入りにチェク。
その後、一度立たされ、下半身を、股間まで入念に触られたのはビックリしたし、ちょっと恥ずかしかった。 だってラミアって、尻尾というか脚の途中から下を見なければ普通に人間の女に見えるから。
「うん、大丈夫ね、武器は持ってない。 他は小さな布しか持ってない」
「じゃあ、まぁ安心ね」




