1. これは駄目だと、諦めた
何故か判らないが、なんとなく違和感を感じて目が覚めた。 仲間から少し離れた場所とはいえ、焚き火の光が届くか届かないかのすぐ近くだ。 火の方を見れば、今の辺りの様子は分かる。
まだ眠ってしまうつもりではなかったのだが、疲れから眠ってしまっていたようだ。
「気疲れだな」
僕はその言葉を呟いたのか、考えただけなのか、はっきりしない。 頭が動いていない。 少しだけど、飲み慣れない酒を飲んだせいだろうか。
起き上がるまでもなく、寝返りをうつように焚き火に視線を向けると・・・・。
出かかった悲鳴を必死で咽喉元で押さえ込んだ。 仲間は皆、ラミアに襲われて、もう地面に転がされている。 一人だけ少し離れた場所にいたお陰で、僕だけがまだ発見されていないようだ。 その異変で変わった気配に、僕は目が覚めたのだろうか。 いや、きっと偶然の幸運だ。
とにかく逃げなくては、それだけしか頭の中にはなかった。 自分が気づかれなかったのは、ただ焚き火の光の届く範囲から外れていて、風が当たらないようにとちょっと窪んだ場所で、今の風向きが風下にあたるという偶然だけだと思う。 ラミアがどの様にして獲物の場所を特定するのか本当のところは知らないが、上半身、いや、脚の部分以外は人型の生き物・魔物なのだから、目や耳で感知していることは確実だ。それにもしかしたら人より鼻も利くかも知れない。 もっと最悪は、脚の部分からは蛇だから、蛇は暗闇でも獲物の熱を感知して見つける種類もあると聞くから、こちらの体温で気づかれるかもしれない。
音を立ててしまって発見されてしまうことを怖れて、そのまま息を凝らしてじっとしているか、本当は一瞬なのだろうが感覚的には長く迷ったが、少しでも離れることを選んだ。 風向きが変われば体臭で感づかれるかもしれないし、朝になって陽が昇れば確実に発見されてしまうだろうからだ。
音を立てないように慎重に、仲間を襲ったラミアたちに気づかれないように、神経を集中して、こちらに意識が向いていないと思われるときに、少しづつ動く。 まずは身を隠せる可能性の高い林の中を目指す。 こんな草原の中ではすぐに気づかれてしまう。
長い時間をかけて(実際にはほんの数分ことだろうけどさ)、僕はやっとほとんどラミアが見えない位置まで離れ、林に飛び込める所まで来て、ほんのちょっとだけ息をついた。 見えなければ発見される可能性は低くなるだろうし、林に入れば隠れる場所も多くなる。
今まで焚き火近くの仲間を襲ってきたラミアにばかりに注意を向けていて、これなら逃げられるかもと、逃げようと思う方向に視線を向けてみたら・・・・、駄目だ終わった。
目の前にラミアがいた。
関連作品の「ラミアの独り言」ですが、そちらを読み進めてしまうと、かなりのネタバレになってしまいます。
ストーリーの進行に従って、「ラミアの独り言」の何話目がその時点での読み頃かを後書きに書きますので、それを基準に「ラミアの独り言」は読み進めていただけると、より楽しめると思います。




