残しもの
家族の繋がりの物語。貴方は日々の喧騒で家族の繋がりを疎かにしていませんか?是非、たくさんの人に目を通していただけると幸いです。
仕事は順調だった。だけど、3年前のあの電話から俺の世界から色がなくなったような感じがしたんだ。俺は信じられなかった。会社から一目散に飛び出し、母さんが運び込まれた地元の病院に行った。
姉ちゃんはもう来ていた。母さんの死因は脳梗塞らしい。俺がもっと心配していたら...何かが変わったのかも知れない。県外でそのまま就職せずに実家に戻って就職すれば何かが変わったのかも知れない。俺はただ、悔やんで泣くことしか出来なかった。
姉ちゃんは1週間前に実家にいって、母さんの元気な姿をみていたらしい。こんなに急になくなってしまうのか。人間の人生は元々儚いものだが、はやすぎた。母さんはまだ50後半なのに。
孤独死というのは、体が腐った異臭などで近所から通報が入り、死亡が確認されるというもの。事後清掃して売却か賃貸にするか解体か聞かれた。そりゃそうだ。住む人が居ないのなら残していても仕方がない。俺は母さんとの思い出を手放したくはなかった。頭が真っ白な中、考えていると姉ちゃんが
「あたしが住む」と言った。妥当だと思ったし、それしかないと思った。姉ちゃんは俺と違って地元で結婚生活をしているし、物の移動も楽。それに、姉ちゃんの家に邪魔したことがあるが、あの賃貸では成長していく子供2人と大人2人が住むのは若干窮屈だろうと。
迎えた葬式。男に生まれた俺は、挨拶をしなくてはいけない。何も考えられなかった。声が震えた。目の前の景色全てが真っ白に見えた。何を喋ったか憶えていない。しかし、無事に母さんは見送ることができた。あの時、俺は泣いたのだろうか、よく憶えていない。
よく分からないまま、俺は家に戻ってきた。それからは、ずっと空っぽな毎日。休みの日もなにもせず家でただ寝ているだけ。お金は貯まっていくが、ただただ無駄な時間を浪費する色のない毎日。それが、今まで続いてきた。今の俺は生きている価値はあるのだろうか?それすらもよく分からない。
飛び起きた俺は物思いに耽っていると、気付いたら朝になっていた。今日は休みなんだ。しかし、何もする気力がない。そこに、電話がかかる。イヤな予感がした。友達の少ない俺にとって、電話が来るなんて稀なこと。しかも早朝。会社か...あるいは...イヤな予感は的中した。病院からの電話。姉ちゃんが過労で倒れたらしい。急いで身支度を済ませ、病院に向かう。
辛うじて意識はあった。安心した。
「夫さんは!?何してる!?」姉ちゃんの答えに俺は驚愕した。母さんが亡くなる4日前に末期癌で亡くなったらしい。立て続けに親しい存在がいなくなって、俺よりも辛かっただろうに、3年前病院で会った時も姉ちゃんは弱い顔少しも見せてなかった。
「どうして言ってくれなかったんだよ!言ってくれたら俺だって...!!」
「あなた、母さんがいなくなって全く気力がなかったじゃない。そんなあなたに、迷惑...かけたくなかったから...」
「迷惑なんて考えるなよ!家族だろ!子供たちはどうするんだよ!それに、過労って...なんだよ!どうして休まないんだよ!子供たちもきっと...いや、絶対に一緒に遊んで欲しいと思ってるはずだろ!」
「ごめんね...でも、お母さんも言ってたでしょ?親になって改めて分かったの。子供たちに少しでも良い生活させてあげたいって。あたしの場合、働かなきゃいけなかったし、自業自得なんだけどさ...。」
「でも!!でも...姉ちゃんが倒れたら、意味ないじゃんか...」
「お金が無くても幸せな生活は出来るはず。そうかもね。でも、あたし、だめだった。耐え切れなかったの。節約しないといけなくて...栄養のあるものを食べさせたかったけど、主食はパンと冷凍うどん。それに多少のおかずを添える。その繰り返し。栄養も完璧にバランスよくは食べさせてあげられなかった。でも、子供たちは笑顔でおいしいって食べてくれる。あたし、笑顔に耐えれなかった。お腹いっぱい好きなもの食べさせてあげたかった。そして、少し無理して白米を買って...仕事を増やして...」
「待てよ、そこまで節約しなきゃいけなかったのか?」
「あたし、彼を助けたかったんだもん。だから、良い病院に入院させたし、最新の治療法も受けさせた...でも...助からなかった。彼が亡くなったとき、多額の生命保険を自分にかけようとしてる痕跡が見つかったの。でも、拒否されたみたい。」
「それで、働いて休まずに倒れたと...。」
「うん...ははっ...あたし、母親失格だよね...たいして子供にも構ってあげられずに、最後までろくな生活させてあげられずにさよならなんて...さ...」
「そんな訳ない...子供たちは幸せだったはずだ!愛情はきっと伝わってる!それに...どうしてこんなになるまで俺に連絡してくれなかったんだよ...!待て...!待ってくれ!また俺だけ置いていくのかよ...!!」
ピーーーーーーー
なんて、この世は残酷なんだろう...俺はただ、立ち尽くすことしか出来なかった。
他に頼れる親族はいない...。諸々の手続きを済ませ、姉ちゃんの子供の優真と愛花は俺が引き取ることになった訳だが...
姉ちゃんの住んでいた家であり、俺たちの実家でもある家に向かう。
「母さんがいなくなって以来...来てなかったな...」
扉を開くと警察官2人と優真がなにやら言い合っている。
「だからね、子供2人だけで生活をしていくなんて無理なんだよ?大人に守られなさい。」
「無理じゃない!!僕が...愛花を母さんに任されたんだ...助けなんかなくても僕だけで守れる!!」
「キミが妹を守りたいという気持ちは充分に理解した。だけど法律的にも論理的にも無理なものは無理なんだ。」
「あの、どうされたんですか?」
「ああ、あなたが雄一さんね。この子たち、いや、お兄ちゃんだけなんだけど、大人の力を借りずに2人だけで生活するって言って聞かないんだ。(子供たちの目線に合わせてしゃがみ)ほら、こちらがこれから世話してくれる雄一兄さんだよ。」
「やだ!僕だけでも愛花は守れるんだ!」
...病院からの連絡が来たのは早朝。ということは、姉ちゃんが倒れたのを連絡したのは優真だろう...。まだ子供なのに、たいしたものだ...
「お前が、母さんが倒れたこと、通報してくれたんだろ?」
「え?うん...深夜に物音がして目が覚めたんだ...そしたら、母さんが倒れてて、急いで近付いたら、お母さんが居なくなったら、愛花を守るのはあなたよって言って、気を失っちゃって...110番に連絡したんだ...」
「....(優真を見つめて)確かに、愛花を守るのはお前だ。でも、お前たちのような子供を守るのが大人の役目なんだ。それに、お前、生活スキルが完璧な身についてるわけじゃないだろ?それは愛花を苦しい生活に追い込んでしまう。もし、千歩譲って愛花を守れたとしても、お前のことは誰が守る?いいから、子供は黙って守られておけ。それも子供の立派な仕事なんだから。」
初めての投稿、そして自分の感情を全面的に出した非常に拙い文章になっておりますが、最後まで読んでくださる方がいると思うととても嬉しいです。感想や評価ポイントを頂けると、とても励みになるので良かったら応援してくださると、嬉しいです。




