閑話 スバル家が帰る前の話
私、カリーナは研究室に来ています。
「パレットさんのおかげで試験が上手くいったよ」
「カリーナさんが一生懸命頑張ったからよ」
「本当に感謝だよ」
「では、感謝はいただきますね」
「試験の時にパレットさんの従姉妹さんに会いましたよ。行方が判らないと言って心配してました
近況だけは話してきました」
「あぁ、あの子ね。ありがとうございます。手紙を送ってみます」
「それでは行きます」
研究室を出てリビングに行った。
リビングに入ると。
お母さんは、お腹を抱え笑っている。
お父さんは、呆れている。
お祖父様は、頭を抱えている。
お祖母様は、オロオロしている。
叔母様は、呆然としている。
スバル姉妹とコロナは、口を半開きで固まっている。
「お母さん、どうしたの?」
「セリカの爆弾発言をダイナが言ったの。それが面白くて」
「なんて言ったんですか?」
「本当に目先しか見ていないんですね、イノシシですかって言ったの」
「ぷっ」思わず笑いそうになった。
「あの子面白いわ!!」
こんなに笑っているお母さんは初めて見た。
「コロナ、コロナ、何固まっているの?」
「お姉ちゃん、何かビックリしちゃって」
「何でこんな事になったの?」
「お祖父様が、セリカの食材とレシピを強請ったみたい」
「お祖父様が、駄々っ子ちゃんみたいな事をしたって事?」
「アハハハ、カリーナも言うわね」お母さんの笑いに拍車がかかった。
「お姉ちゃん、トドメを刺しちゃったみたいよ。
お祖父様がもっと沈んだ」
「やっちゃた」
「いいの、お父様には反省してもらわないと」
後はお母さんに纏めてもらおう。
ー・ー・ー・ー・ー
セリカは食材倉庫に来て、スバル家に渡す調味料を瓶に入れていた。
「お嬢、何しているんだ」
ユーナさんとシンディーさんが来た。
「スバル家に渡す調味料を瓶に入れてる。2人こそどうしたの?」
「お嬢の建てた倉庫と食材を見に来た」
「自由に見ていいよ」
2人は地下へ入って行った。
「後は味噌だけだね」
「終わったかぁ?」
「もうちょっとで終わるよ」
味噌を入れながら話をした。
「新作をいっぱい作ったなー」
「勢いに任せて作ったよ」
「私もこっちが良かったなー」
「王都で美味しいもの食べたのでしょ?」
「お嬢の料理の方が美味かったよ。王都でもお嬢のレシピの料理が有ったけど味が悪かったよ。
コロナお嬢も微妙とか言ってた」
「普通は王都なら美味しい物がいっぱいありそうだよ。知らない料理が有ったらワクワクしそうだよ」
「それが全然無かった」
「そうなんだ。スバル家の料理人はどうだったの?」
「彼処は自分達で新しい料理を作る気はないな。
新しいレシピは喜ぶけど自分達からは何もやらない。お嬢がみたら文句を言いそうだよ」
「そうなんだ。料理人はいないんだね」
「お嬢から見たらそうだろうな」
「ヨシ! 終わった。後はレシピの写しだ」
「辺境伯様か?」
「そう。2品だけ渡して後は無視する。でもさっきの話を聞くと調味料が勿体ないな」
「そう思うよ」
2人にも持ってもらって屋敷に戻った。
ー・ー・ー・ー・ー
夕食の後、自室で魔導具の作る順番を変更の資料を作っていた。
「セリカちゃん、今いい?」
「大丈夫ですよ」
お姉ちゃんズ4人が入って来た。
「セリカ、何かやってたの?」カリーナが言った。
「魔導具の作る順番を替えようと思っていて、考えてただけ」
「何で替えるの」ステラが言った。
「籾摺り器があまり上手くいっていなくて時間がかかりそうなんです。なのでドライヤーとヘアアイロンを先に作ろうかと」
「ドライヤーってなんなの? セリカちゃん」
「濡れた髪を乾かす魔導具ですよ」
「ヘアアイロンは何?」
「寝癖とかを直したり髪に癖を付けして髪型を変えたり出来ます」
「セリカ、早く作って!!」カリーナが前のめりで言って来た。
「そのつもりですよ」
その後も魔導具の話をしていた。
「お母さんの笑い声が響いていたのですが、何かあったのですか?」
「お父さんがお祖父様に、セリカの爆弾発言を言ったら、お母さんがお腹抱えて笑い出して、その後カリーナお姉ちゃんがトドメを刺して、それを聞いたお母さんが大笑いした」コロナが説明した。
「カリーナお姉ちゃんは何を言ったのですか?」
「駄々っ子ですかと言った」
「さすがです。カリーナお姉ちゃんいい事言った」
「セリカちゃんはお祖父様とは仲良くしないの?」
「はい、しません。根っこの部分が違い過ぎます」
「どう違うの?」
「私は何かをやっても、最終的に皆が喜んでくれればいいと思っていますが、辺境伯は自分の満足のためだけです。手に入らない物は人の物から持っていこうとします。それもお金を払わずにやります。なので解り合えないのです。人格も否定されてますから。
それと今回の事で、執拗にレシピを求める理由も解りましたから」
「セリカさん、レシピを求める理由とは何ですか?」
「スバル家には料理人がいないのです。ただ料理を作れる人しかいません。レシピを見ないと新しい料理が無いのです。味付けを変える訳でも無く、同じ物しか出来ません。スバル家の料理人と呼ばれる人達は、自分達から動かないから領主一家に満足させる味が無いのです。それが理由です。今回調味料を購入する様ですが、持て余しそうですね。一緒に渡すレシピの中にステラお姉ちゃんが好きと言ったサラダのドレッシングを入れてありますよ」
「やったー。セリカちゃんありがとう」
「ただ、お酢はフソウ国の調味料じゃ無いので今回のには入って無いです」
「セリカさんはお酢をどうやって探したのですか?」
お酢の話をしていると。
「忘れてた。セリカこれお土産」カリーナがセリカに渡した。
「ありがとう。お姉ちゃん嬉しいです」
受け取って、中身を出す。大人の手のひらサイズの四角い箱に丸いテーブルにが付いていた。テーブルの中心から軸1本で箱に繫がっていた。
「これは何ですか?」
「魔導具で、魔力を入れるとくるくる回るだけ、やめるとゆっくり止まる」
「へー面白い。何か出来そう」
「もう考えついたの?」
「うん、2つ考えついた。明日1つ作ろうかな」
「なになに、何を作るの?」
ステラがワクワクしながら聞いて来た。
「実は・・・・・」
新しい魔導具の話で盛り上がった。
王都では、宰相が国王に報告をしていた。
「陛下、新しい魔導具が登録されました」
「何が出来た?」
「精米機です。米を磨くための魔導具だそうです」
「また米なのか?私達に役に立つ物は出来んのか?」
「さぁ? 私に聞かれても困りますが」
「ホーデン家に通達を出すか。もっと王都の役に立つ物を作れと」
「自分達で作れ、王都で必要なものは判らないと言われるだけでしょうね」
「くっ!」
「それとホーデン領では、年明けに夜空に綺麗な花の様な物が上がったそうです。役所に問い合わせた所、ホーデン家の3女が花火と言うものを300発程やったそうです。とても綺麗なもので町の住人からは来年もやって欲しいと要望があるそうです。これは光の魔法を使っているので、火事等の災害は無いそうです。年明けの音と光の祭典だそうです」
「面白そうだな。呼ぶか?」
「必要無いでしょう。光の魔法を使うと書いてあります。魔法室で十分でしょう。呼んだとしても逆にお前たちが来いと言われるでしょうね。それも有料で」
「わかった、魔法室の方で検証させよ」
「はい」宰相は出て行った。
「何故上手くいかない」
また頭を抱えた国王であった。
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