閑話 学園祭前の第3王女
(SIDE 第3王女)
「第3王女は学園祭では何かやるの?」
母親である側妃殿下に聞かれたので答えた。
「料理部で出店して北の海の幸のフライとそれを使ったサンドイッチのお店をやります」
「王都で北の海産物が食べれる様になるのかしら?」
「今回は実験ですのでその辺はわかりませんが、ホーデン領で荷馬車用の冷凍庫を開発して北の領から運んでいます
ただ生食が扱えないのでフライがメインになりました」
「貴方はもう食べたのですか?」
「はい、とても美味しかったです。
お店でやる以外の料理もセリカさんが作ってくれましたので色々と食べました」
セリカさんが作ってくれたがどの様な料理かを説明すると側妃殿下の喉がゴクンと鳴りました。
「そのカニと言うのは食べれ無いの?
クリームコロッケとカニクリームのスパゲッティを食べてみたいわ」
「レシピが無いの、セリカさんがあっと言う間に作ってしまってこっちも手順とかを追っていけなかったの。
多分ですけどレシピ公開はホーデン領と先輩の北の男爵領のみになると思いますよ」
「え〜どうしてなの?」
先日の会議の時にセリカのレシピが改悪されている事や人のレシピを当てにして料理人がただの料理を作る人になってしまう事、各領にはそれぞれ美味しい食材が有るので特産品を作って人の流動性を出す事で経済を上向きにしたい等を言った。
「そういえば王都では塩胡椒が好まれると言っていたわね」
「そうです。寺子屋の人達には濃すぎる様で、コロッケだとお芋本来の美味しさが消されていると言ってました。フソウ国の人達もそうみたいですね。
地方によって好みが有るのではと考えます。
ミウラも同じ物でもホーデン領の方が美味しいと言っていました」
「一度料理長と話した方が良いわね」
「そうですね、その方が良いかもしれません」
母親との話を終えて王宮の厨房に向かった。
◆
「料理長ちょっと良いかしら?」
「殿下どうなさいましたか?」
「ちょっと相談が有るのだけど」
第3王女は先程の母親との話を料理長に話しをした。
「この話を聞いてどう思いますか?」
「確かに王都では塩胡椒は好まれますがそこまで味が変わりますかね?」
「例えばお芋の品種が違うとか、調味料の差とか」
「そこまで深く考えなくても良いと思いますよ」
「レシピを書いた本人が言っているのに本当にそう思いますか?」
「ん〜一度話してみたいですね。
実際にどう違うのか知りたいです」
「一応聞いてみますね」
「お願いします。
それで学園祭では何かなさるのですか?」
「北の海産物のフライとそれを使ったサンドイッチのお店をやるの。
ただやる人数が少ないからメニューは少ないわよ。
諦めたメニューも有るから。
まぁ当日を楽しみにしていて」
「そうします」
厨房を出てから寮に戻ります。
◆
寮に戻ると夕食に行くセリカさん達に会いましたので一緒に食べる事にしました。
食事をセルフで取ってから席に着きます。
「そう言えばセリカさん達南部の方は王都の味が濃いと言っていましたがどう言う事ですか?」
「先ず品種が違うのでレシピと同じにすると濃く感じます。
それと塩の違いもあるかもしれません。
南部では海の塩を使っていますが王都では塩の子爵の岩塩ですよね」
「塩は塩ですよね?」
「塩は採れる所によって味が違いますよ」
セリカさんは服のポケットから塩を出して空いている小皿に少量出した。
味をみて下さいと言われたので指に塩をつけて舐めると、優しい感じの塩っぱさだった。
これに比べると何時もの塩はガツンと来る尖った味に感じる。
「比べると全然違いますね」
セリカさんは焼いたお肉だと岩塩で煮物だと海の塩を使っているそうで、使い分けをしている。
それで王宮の料理長が会いたいと言っていたのですがと聞いてみると、王都の農産物や水産物で他には無い自慢出来る物を教えてくれたら会っても良いと言っていた。調味料や加工品でも良いと言われた。
ミウラがまたやってるの?と言っていたので、聞いてみると料理人かただ料理を作れる人なのかを見定めているそうだ。
それはどう言う事なのか聞くとセリカさんに止められた。答えを言っても面白く無いからと。
ミウラが家もやられたよと言っていた。
どう言う事だろう?
一応料理長には言っておこう。
◆
翌日の放課後、王宮の厨房に行き料理長に会いにきた。
「料理長、一応会って貰えるけど条件があるそうで、王都の農産物や水産物で他には無い自慢出来る物を教えて欲しい。調味料や加工品でも良いそうよ」
「その様なのは無いです。全て集まって来ますから」
「探したりしないの?」
「しません。欲しいのは商人に言うだけですから」
「そう、そう言うなら一生会えないでしょうね」
「どう言う事でしょうか?」
「先程の条件で料理人かただ料理を作れる人かを見定めているそうよ。
だからセリカさんにしたら料理長は料理人では無いと言うことね」
「良くわからないのですが」
「セリカさんは料理人では無く、自ら食材を探して最先端の料理を考えて作る人よ、料理長は最先端の料理は考えられるの? レシピを見ないと新しい料理が出来無いのは料理人では無くただ料理を作れる人だって言っていたわ。レシピを見れば主婦でも出来るから料理人である必要が無いと以前ミウラがセリカさんに聞いたみたいなの。
それと味が濃い件だけどやはり品種の違いが大きいと言っていたわ。
後1つが塩が違ったわ。南部は海塩を使っているの」
「塩は塩でしょう?」
「それが違うの、海は優しい感じで、岩塩は尖った感じなの。これは比べないとわからないわ。
取り敢えずこんなところね」
「彼女は王都の料理人を料理人として認めていないと言うことですね」
「そうかもね。今までのレシピは王都では改悪されていると言っていたから。
それに王都の料理で美味しいと思った事は無いそうよ。
私もセリカさんの料理を食べた後だと寮の食事が物足りないと思うわ。味が足りないと思うことが有るから」
「改悪、美味しいと思った事が無い、味が足りない」
「料理長気を落とさ無いの。私も一緒にやるから頑張りましょう」
「そうですね殿下」
もうすぐ学園祭になる。
いっぱい売れると良いな。
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