スキヤキ
宿に戻って来ました。
時間的にはお昼前なので、お出かけ組はまだ帰ってきてはいません。
「皇女様、何か食べに行きませんか? 食べれば落ち着くかもしれません」
「そうしましょうか。美味しい物を食べれば笑顔になりますから」
宿の女将さんに食堂の場所を聞いて出かける事にしました。
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宿から歩いて直ぐと言っていたので、歩いて行くと高級料亭の様な佇まいの店でした。
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店内に入り個室のテーブル席に案内されました
メニューを見ると何か凄い懐石料理が書いてありました。
何にしようか迷っているとスキヤキがありました。
「私はスキヤキにします。シンディーさんは?」
「私はお嬢様と一緒にします。メニューを見ても想像がつかないので」
「私達も同じにしましょう。スキヤキは美味しいので元気が出ますから」
スキヤキを4人分注文した。
暫くすると4つのスキヤキ鍋とお肉、野菜、ごはん、玉子が来た。
お肉は綺麗なサシが入った牛肉だったので期待できそうだ。
作るのは店員さんがやってくれた。割り下を使った関東風の感じで、しらたきもありました。
「では食べましょう」
皇女様が言ってくれたので食べ始めます。
お肉を玉子につけて口へ。
「このお肉は凄いです。口の中で溶けてしまいそうです」
「相変わらず美味しそうに食べますね! こちらも嬉しくなります」
店員さんがこのお肉の事を話してくれた。
このお肉は特別に契約している酪農家から直接仕入れていると言っていた。
「それだったら餌や環境の良い特別な育て方をしているのですね」
「お嬢様そんな事もわかるのですか?」
シンディーさんが驚いている。
「聞きかじりだけどね。その内酪農を始めてみようかな? チーズとかクリームとか出来そうだから」
「また始めるのですか?」
「領の発展に終わりは無いのよ。皆の生活を豊かにしないと」
「セリカさんの言う通りですね。民が豊かになれば国も豊かになります。終わりはないです」
皇女様も私と同じ思いを持っている。
「シンディーさんだってその内独立して店を持てば、繁盛させる事を考えないといけないよ。
それと同じで規模が大きいか小さいだけだよ。
それでは1つ問題を出します。このスキヤキを使って別の商品を作って下さい」
「えっ!このスキヤキですか? んーーわからないです」
「私は2つできましたよ。今回は答えを言いましょう。
大きな鍋でスキヤキを大量に作り、ごはんを盛った丼や皿にのせるのが1つです。
お肉は安いので十分です。これを屋台や食堂で提供すればスキヤキ丼として商品が出来ます。
それを食べたお客さんの何割かはスキヤキと言うのをちゃんと食べてみようとなり相乗効果も期待出来ます」
「セリカさんの発想は凄いですね。スキヤキ丼も答えを聞けば、あぁそうだとなりますけど、そこに行くまでが大変ですよ」
皇女様が関心している。
「そうですか? でも一度考えつけば後は同じで出来る事は多いですよ。このスキヤキでも肉をオークや鶏に変えても別商品になりますよ。
刺身で海鮮丼やオークのフライでも4種類は出来ますよ。シンディーさんにはオークのフライで丼を1つ作る宿題を出しましょう。ヒントは新しい調味料と言う事で」
「わかりました、頑張ります」
「ちょっとした組み合わせでいろんな物ができるしレシピが全てではないよ」
「はい」
これでシンディーさんもステップアップできるかな?
食べ終わったのですがちょっと物足りない無かったのでごはんを一杯頼みました。
「お嬢様、スキヤキを食べてしまったのにごはんをもらったのですか?」
シンディーさんが言って来た。
「そうです。これからスキヤキの〆をします」
ごはんが来てスキヤキに使った玉子とタレを少々入れてからかける。
「変わった事をしますね」
皇女様は不思議な物をみるようにこちらを見ている。
「この玉子のはスキヤキのタレが入っていて、タレには肉の脂も入って旨味が増しています。しいて言えばスキヤキ丼の肉無しですね。
これを食べてスキヤキの余韻に浸って終わると言う事です」
店員さんもこちらを見ている。
何をするのか気になっているようだ。
私は玉子をかけたごはんを軽く混ぜて食べる。
「ん~~美味しい」
「私もやってみましょう」
皇女様もごはんを頼んだ。
皇女様も来たごはんに玉子とタレをかけて軽く混ぜてから食べた。
「ん、美味しいですお肉が無いのにスキヤキを食べた気分にもなります。最後にはぴったりです」
シンディーさんと皇女様の侍女さんも同じ様にやり始めた。
食べた後シンディーさんの目が見開いて大きくなっていた。
その後お店の女将と料理長が来てこの食べ方を使わせて欲しいと頼まれたので「良いよ」と答えた。
それとスキヤキ丼も使わせて欲しいと言って来た。
どうやらこれも店員さんが聞いていて料理長に話していたらしい。
暫く後に別形態のスキヤキ丼の店が出来て、安価で食べれるので大勢のお客さんが来る様になったとか。
この店でもミラージュ殿下が食べた、スキヤキの〆ごはんと言う事で有名になったそうだ。
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