視察団の帰還
お祭も終わり、後は新年を迎えるだけとなりました。 両親は、王都に向かう準備をしています。
コロナお姉ちゃんは行かないそうです。
私は、新年の花火が有るので行きません。
パレットさんも行きません。
王都では、ホーデン領への視察団が戻り、国王と会議となっていました。
「よく戻った、結果を聞こうか?」
国王の話から始まり、宰相が答えた。
「ホーデン領で、講習を受けて話を聞き、体験した結果は以下になります」
○ ホーデン領の講習内容は、買い取ってでも導入した方が良い。
○ 全ては、人命優先で決められている。 ○ 話だけでは解らない部分を全て実物を使い、講習で説明される。
○ 町中でも規律ある走行がされている。
○ 役所でもこの為に専門部署が新設されている。
○ キックボード自体の回転魔導具の構造が違った。
1)サンニッチ製は魔力を切ると惰性で回りっ放しになっている。
2)ホーデン製は魔力を切ると回転がゆっくりになり減速が出来る。夏前の王都での試験走行の結果を受けて、リアブレーキを付けて止まれる距離を短くしている。
○ 今回の合格者は、学科で15名、実技で12名です。 割と厳しめで、貴族の者でも不合格を出す。
○ 合格者12名の登録は終わっており、納品待ち。 「以上となります」
宰相の話を聞き、国王は指針を出す。
「サンニッチ、魔導具と本体の改良は出来るか?」 「出来ると思います」
「新年にホーデンが来るから、その時に買い取りの話をしよう。 それに向けて、王城では専門の部署を作り教育関係を進めよ。
サンニッチは、引き続き安全装置の取り付けを含めたキックボードの改良をして、再販の準備をせよ。以上だ」
話が纏まり会議が終了した。
◆
国王と宰相は、国王の執務室に行き、話をしていた。
「今回は、ご苦労だった。それでホーデン領は、どうであった?」
「新しい事がどんどん始まり活気が有りました。貿易は、今では定期的に船が入って来ています。量的には少ないですが、これからと言う事でしょう。
食事も良かったですね。元々海産物が豊富ですが、フソウ国の食材が入って来たことにより、領内公開レシピが多く有ります。一般の食堂でも王都よりも美味しかったです。 珍しい料理もいただいております」
「珍しい料理は、何だったんだ?」
「フソウ国の香辛料を使った料理です。それと、視察が終わった後にお祭があり、まだレシピにしていない料理も有りました。
調味料関係はまだ製造を開始したばかりなので製造量は少ないので、王都にはまだ来ません。
それと、化粧品関係にも手を出し始めています。効能がとても良いと評判で有り、製造が間に合っていないそうです。保存期間が短いので王都には来ません」 「食材とかは、早く来ないのか?」
「今は無理です。まだ始まったばかりですから、無理をすれば、品質の劣化した物になって仕舞います」
「・・・・・それで、ホーデン家の3女には会ったのか?」
「えぇ、会いました。頭の良い子ですね。回転も早く、先の事をしっかりと見ています。
自由にしているから、イロイロと見て発想をしていると思います。強制ならば、何もしないでしょう。反発するだけです」
「王家には無理か?」
「無理ですね。そのまま船に乗ってフソウ国に行って仕舞うと思いますよ。 本人も学園は判りませんが、王都に行くつもりは有りません。
王都の事は王都の人が考えればいい事で、余所者の人間が考える事では無いと言っていました。
それに刺し身が無い所には行きませんと言っていました」
「刺し身とは何だ?」
「生の魚の切り身です。それをフソウ国の醤油とワサビにつけてお米で食べるのが好きだそうです。週に3回以上食べているそうです。
それに、まだやりたい事があるそうなので無理でしょうね」
「それは何だ?」
「教えてもらえませんでした」
「そうか、疲れただろう。今日は終わろう」
国王との話が終わり、宰相は王都のタウンハウスに帰って行った。
◆
「戻ったぞ」
宰相は、タウンハウスに帰って来た。
「お帰りなさい」
「お祖父様、お帰りなさい」
宰相の奥方と孫の女の子が出迎えた。 リビングでは、宰相は家族と過ごしている。
「お祖父様、ホーデン領はどうでしたか?」
「とても良かったし、楽しかった。また行きたいと思っているよ」
「今度は私も連れて行って下さい」
「そうだな皆で行こうか。お土産を渡すよ」
お土産は、フソウ国の柘植の櫛とホーデン領の新作の石鹸シャンプー、リンスを渡した。 その後はホーデン領のお祭、花火、食事等の事を話し、楽しく過ごしていた。
国王は、どうにかホーデン家の3女を王家側に引き込み、王都を発展させて全ての物を王都からの発信とさせたいと考えていたが、良い案が浮かばなかった。
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