発売開始と辺境伯
お姉ちゃんと皇女様は王都に帰って行った。
1年位会えないのか。
魔導具の冷蔵庫と冷凍庫は断熱と扉のパッキンの関係が上手くいっていないらしいです。
魔導具3輪車は出来ました。キックボードとは違い操縦者が座るところがあります。
キックボードよりも1回り大きい回転の魔導具を使っているので、魔力だけのコントロールだけでは止まる距離が長くなるので、ブレーキを追加しました。
キックボードもリヤのみブレーキを追加しました。
これは、お姉ちゃんが王都の外縁部の町を速度を出して走っている時に何度かぶつかりそうになったのを聞いたので、追加しました。
お姉ちゃん達の3台はブレーキを付けて渡しました。
魔導3輪車にはオプションとしてハンドルの前と座席の後ろにカゴを付けれる様にしてあります。
運転ルールも、お父さんや役所を交えて何度も会議等をして決めました。お姉ちゃんからの実走行体験も加味しています。
学科と実技の講習場所は、魔導具工房の近くに作りました。
キックボードと魔導3輪車はクオンさんの商会の人たちにデモンストレーションとして、半月程使ってもらっています。ちゃんと教育はしたよ!!
ついに発売日となりました。役所と商業ギルド、クオンさんの店にチラシを張り予約募集をしました。
チラシは、私のお手製だよ。
購入の方法は、
① ユーディー商会で予約
② 予約日に講習場所に行く
③ 学科講習を受け、終了後にテストを行い合格者の
み実技へ
④ 実技講習を受けてからテストを行い合格者のみ
販売へ (合格書カードを渡す)
⑤ 購入品への登録、支払い
となります。
1日の販売台数は、キックボードが20台、魔導3輪車が10台となっています。
実技用は持ち出せ無いように仕掛けをしています。
敷地外に出るとタイヤがロックしてから1tの重量になる様にしています。
オープニングセレモニーが始まり、お父さんの挨拶が終わり、私が挨拶をする事になっています。何故?
「ついに販売となりました。とても便利な乗り物です。でも使い方によっては凶器にもなります。第三者を優先して安全に使用して下さい。事故が無いように祈ります」
簡単な商品説明をしてから講習が始まりました。
本日の講師は、私です。明日からは役所の人が行ます。新規の部署を設けました。
「学科の講習を始めます。これから言う事はとても大切な事です。一歩間違えれば犯罪者になりますのでしっかりと聞いて下さい。質問は最後にお願いします。途中で騒いだりしたら退場です。
それでは始めます」
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「今回は全員合格です。実技の方にお願いします」
実技の方はボード組と魔導3輪車組に分かれて行います。講師は役所の方にお任せです。
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「実技も全員合格です。合格書カードを受け取って登録をしてから支払いして終了となります。
お疲れ様でした」
第1回目は無事終わりました。
予約の方は30日程埋まっているそうです。
町でもキックボードや魔導3輪車を良く見かける様になりました。今のところ事故等の報告は受けていません。良かった!!
此処のところキックボード関連で料理をして無かったので、皇女様にお土産でもらったもち米で何か作りたいと考えて居たら、辺境伯様が来ました。
私は自室から出ませんよ。
「ダイナ、どういう事じゃ」
「何がですか?」
「キックボードじゃ」
「キックボードがどうかしたのですか?」
「何故買えんのじゃ」
「講習を受けて合格すれば買えますよ」
「何故講習を受けなければならんのじゃ」
「命を守る為に講習をやりますと、以前言ったはずですよ。もうお忘れですか?誰であろうとも講習を受けない者には売りませんよ」
「わかったのじゃ、今から行くのじゃ」
「予約を取らないと受けてませんよ。製造台数に合わせて講習の人数を決めていますから。今は45日待ちになっているはずですよ」
「もう待てんのじゃ。今直ぐ欲しいのじゃ」
「それだったら御自分で作った方が早いですよ」
「お父様いい加減にして下さい。出入り禁止にしますよ。もう帰って下さい。どうせ学科のテストで落ちるのですから」
「くーー、もういい!!」
辺境伯は、屋敷から出て行った。
その後、大騒ぎになった。辺境伯は講習の施設に行き実技用のキックボードを奪い、魔力全開で敷地を出た瞬間、タイヤがロックして急減速がかかり、体が飛ばされ大怪我をした。命は助かったが、打ち身と手足の骨折となった。
一旦治療所に入り診察と治療を行なった。
もち米のレシピを書いていると、お父さんが慌ててやって来た。
「セリカ大変だ。義父上が大怪我をした」
「はぁ?」
話を聞くと、施設のキックボードを奪ったそうだ。
「馬鹿ですか? 自業自得ですね。パレットさんに言ってポーションを作ってもらいましょう」
研究室に行き、中級のポーションを作ってもらう。
上級は、材料が無いため出来なかった。
治療所に行き、辺境伯にポーションを飲ませたら骨折以外はとりあえずは治った。
暫くすると、辺境伯が目を開けた。
「セリカ」
「貴方は馬鹿ですか? 今回は自業自得ですね。人の話を一切聞かなかったのだから。それに講習者には良い教訓になりましたよ」
そう言って部屋を出た。後は両親に任せよう。
2日後には、ルバス家が全員来た。(シフォンお姉ちゃんを除く)
叔父様はお父さんに頭を下げ、謝っていた。
数日は検査とかがあり治療院に入っているそうだ。
1週間後、領地に戻って行った。
その頃王城では、国王と宰相が話をしていた。
「キックボードと魔導3輪車が発売となりました。
購入するには、学科と実技の講習を受けてからテストを行い、合格者のみ購入出来るそうです。
現時点では45日待ちになっています。
1日の販売台数は、キックボードが20台で、魔導3輪車が10台です」
「少ないな、もっと増やせないのか?」
「現状でフル生産であり講習をするのにこれ以上は増やせ無いそうです」
「王都ではできないのか?」
「講師の数が少ないのもありますが、施設を持って行けないので無理だそうです。施設を作っても肝心の商品がなければ無駄になります」
「王都の魔導具師に作らせればいいのではないのか?」
「ライセンス料がかかり大分高い物になりますけど宜しいのですか?」
「ライセンス料とは何だ?」
「知的財産を使用する権利に対して支払われる料金です。技術や設計のノウハウも該当します。
講師の料金もあがりそうですね」
「高くなるのは宜しくないな。もう少し考えてみるか」
「それともう一つですが、ルバス辺境伯が大怪我をしました。
その理由が講習無しでホーデン家に購入させろと言ったのですが、それを断った為講習所のキックボードを強奪しました。
そのキックボードには盗難防止の為敷地から出るとタイヤがロックする様になって致そうです。
辺境伯は強奪した後、魔力全開で走って敷地から出た瞬間にタイヤがロックして急減速になり体が飛ばされました。
命は大丈夫ですが、打ち身と手足の骨折となりました」
「貴族が強奪だと!! 何をやっておるのだ、そんなヤツは要らん。引退させろ!! 領民に悪影響が出る。直ぐに書状を出せ」
「かしこまりました。では失礼します」
宰相が出て行った。
1か月後、ルバス辺境伯家は当主が交代となった。
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