ホーデン領に来て パレット編
(SIDE パレット)
私がホーデン領に来てからもうすぐ1年になります。此処に来たことは、一生の宝ものです。
何故ホーデン領に来たかと言うと、前の勤め先である王立魔法薬師研究所で冤罪をかけられ解雇されました。1年遅れて入所してきた5人組の男性職員が、所長に訴え出たことが始まりでした。
私には身に覚えが無く、話も聞いてもらえませんでした。所長は調べる事無く私を解雇しました。
研究所で私物と研究途中の資料を持ち出して寮に戻り、寮管理長に話をして明日の朝に退寮になったので、お父様に借りているマジックバッグに、部屋に有るベッドと私物の布団以外の物を入れて、ベッドに横になりこれからの事を考えました。何処かで薬師として働ければと思いながら、そのまま寝てしましました。
朝になり、布団をバッグに入れて退寮の手続きをして外の出て、朝からやっている行き付けのカフェで軽く朝食を取りながら、これからどうしようか考え、王都には居たく無かったので、見たことの無い海を見ようと思い、乗り合い馬車乗り場に行き、時間を確認しました。
北方向は、本日の発車が午後で、南のスバル領経由のホーデン領行きは2時間後の発車がありました。
ホーデン領は最近、美味しい食事が出来るのは知っていたのでその馬車に乗ろうと決めました。
そのまま切符を買いましたが、時間が有ったので商業ギルドに行き、行商で個人登録しました。
薬師ギルドの個人登録していますが、地方とかですと商業ギルドの方が信頼性が高いし、支部も沢山有りますので、途中でポーションを売ろうかと考えています。
ギルド証は身分証明になるのでとても便利です。お金も預かっていただけ、他領のギルドでも引き出す事が出来ます。
貯めたお金の半分を預けてから、馬車乗り場に行くと、改札が始まっていました。
馬車は4頭引きの大型の馬車でした。改札をして中に入ると、進行方向に向かって右が2席、左が1席で6列あり、私の席は一番後ろの1席側でした。
もうすぐ発車になりそうな時に反対側の席に女の子を連れた女性が座りました。前の席とその隣も女性でした。女性同士で固めているみたいです。
馬車が発車して、私の旅が始まりました。ホーデン領迄は3週間程かかる長距離です。
暫く馬車に揺られ乗っていると、隣の女性から声をかけられ、話をしていました。この女性は、ホーデン領の方でお店を開いているそうで、年に2回程王都に行っているそうです。
話をしていると、野宿は無く宿か低料金の宿泊所になるので、安心して旅が出来そうです。
途中で私の前の方が話に参加して来て楽しくなって来ました。
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無事にホーデン領の領都に着き、一緒に乗っていた方々と別れて、宿探しです。
2軒程断られ、3軒目で決まり1週間の宿泊でお願いしました。
町に人が多いので、宿の人に聞いてみると、明後日から見本市と言うお祭が有るので南部各地から人が集まっているそうです。
商業ギルドに行き、露店の申請と許可をいただき、ポーションを売る準備を進めます。
この時はまだ、思いがけない出会いがあると思っていませんでした。
見本市当日は、人が2人程座れる程のスペースを借り中級迄のポーションの販売です。午前中はそこそこ売れて行き、黒字になりそうです。
その場で昼食を取り午後の販売を始めると、小さい女の子がやって来ました。
「こんにちは、これは何ですか?」と聞かれポーションと答えて、話をしました。
突然走って行ったので、何かと思ったら、父親と一緒に来ました。
話をしていくと男性は、領主様であり娘の家庭教師をして欲しいと言って、明日面接をする事をが決まりました。仕事を探していましたが、突然の申し出にビックリして仕舞いました。領主様は先に行かれましたが、女の子は面接を受けてくれるか聞いて来ました。
「領主様の面接が通れば受けたい」と答えました。
女の子は、「じゃぁ、明日ね」と言って帰って行った。
その日のポーションは、全て売り切りました。
片づけをして、ギルドに終了の報告をして、食べ歩きしながら宿に帰り、夜になってから面接の事で緊張して寝れませんでした。
面接の当日、領主邸に行き面接をしています。
辺境伯様も面接側に同席されていて余計に緊張してしまった。
面接中に錬金術のスキルがあると聞きビックリしてしまった。
そして、ステータスと言うものを教えてもらい、見てみると、錬金術のスキルが本当に有った。
研究所に入る前は、無かったのに。
話を進めて行くと、家庭教師の他にも研究開発もやって欲しいと言われ、主に女性用の化粧品をやる様だ。
思わず「面白そう」と言ってしまった。
そして、合格をもらった。
宿を引き払った後(キャンセル料は無し)メイドのサツキさんに、セリカさんの事を聞いてみたら、とても楽しく有能のようです。私もこれからが楽しみです。
セリカさんも気遣ってくれているようで、気分転換に魔導具工房や海の幸の豊富な食堂、海岸迄案内してくれました。
初めて、近くで海を見ました。風が気持ち良く、波の音も心地良かったです。
セリカさんが海の中が見える様にと橋を作ってくれて、初めての経験が出来ました。
その後、マグロと言う魚を取った時は驚きました。
あんなにも大きい魚がいるとは思いませんでした。
その日初めての生の魚を食べ、感動しました。
王都では絶対に食べれない食材にハマって仕舞いました。
研究室を作ると聞いた時は、1ヶ月位かかると思っていましたが、土魔法であっと言う間に作って仕舞いました。夢を見ている様です。
思わず、見に来ていたルシーダ様にセリカさんの魔力量を聞いて仕舞いました。
ルシーダ様曰く、相当有るそうです。多分大人数十人分ありそうだ。それにメモ書きや絵等を書いて準備している。ここ迄来るのに相当努力したのだろう。
でも本当に4歳なのかと思ってしまう。行動といい、話し方といい私よりも年上に見えてしまう。
研究室が出来、本格的に始まった。
家庭教師は、週の前半3日になった。その他の時間は、必要な物を集めよう。
最初の課題は、手荒れ防止薬からになった。
授業では、基礎からですが時々セリカさんの方が詳しい時があります。でもコチラの話を真剣に聞いてくれ、時折質問では鋭い事も言ってきます。
2回目からは、上の2人も参加して来ました。
3人のやりとりが面白いです。
無事に働くところが見つかったので実家に近況とメイドを1人貸して欲しいと手紙に書いたところ、返事よりもメイドのメグが先に来ました。
メグは、学園に入る前にほぼ専属の侍女で、とても仲良くやっていました。メグが来てくれた事はとっても嬉しいです。
実家では、私が行方不明になっていたので、とても心配していたそうです。無事で有る事にほっとしたそうです。
研究開発の方は手探り状態でしたが、セリカさんがアロエと言う植物を探し出してからはある程度迄進むようになりました。
カリーナさんに聞いた魔法の基礎訓練をする様になってからは魔法の発動がスムーズになり、何故か鑑定も使える様になりました。不思議です。
セリカさんと開発を始めてからは物の見方が変わってきたようです。特に錬金釜を使う作業の時は、何でこの材料が必要なんだろうかと思う事があります。
しかし、結果として正解なのです。
本当に面白いです。来て良かった。
セリカさんに出会えて良かった。
私に錬金薬師と言う道を示してくれた事に感謝ですね。
これからも、楽しい毎日が続きます様に。
後にパレットは、この国初の錬金薬師になる。
化粧品の分野ではトップに君臨する事になり、色んな貴族からは結婚の申し込みが有ったそうだ。
でもそれは別の話。
ご覧いただきありがとうございます。
100話と言うことでパレット編を書いて見ました。




