デスゲームの作り方1 参加者は公平に(4)
「久しぶりだね。ヒカル君」
「はい。2週間ぶりですね」
あれから2週間。
それは、ルール作りを放棄した期間と全く同じだった。
(あとで終わらせればいいんだ……)
ずっと言い聞かせた、とても早い休み時間だった。
「戸籍を確認して、ルーレットで決めたよ」
己龍は前と同じように椅子に座っている。
そいつは1枚の紙をあたしに差し出した。
そこには30人の参加者の名前が書かれている。
もちろん、知らない名前が多かった。
――知っている名前もいた。
「月見……⁉」
「君の知り合いだったかな?」
「はい。友達……いいえ、親友です」
なんとかこらえているが正直、控えめに言って最悪だ。
心臓だけがナイフで切られたかのように胸がキリキリとする。
「そうかい、でも変更を強制することはできないよ」
「…………は?」
こいつは、一体何を言っているんだ……?
「条件三つ目、『参加者の変更を強制しない』。その条件を呑んで承諾したのは君だろう?」
「――」
痛みも受けながら、気持ち悪さまでが襲ってきた。
今すぐにでも吐いてしまいたいぐらいだ。
(……っ!)
だけど吐けない、それがよりあたしを辛くする。
己龍の言っていることに納得することはできる。
あたしが何をすることもできないのはわかっていた。
だって、己龍によって決められてしまったものなのだから。
「嫌だ」って、言えたらいいのに。
声がでなかった。
「己龍さん。まさか本当におっしゃっているのですか?」
「なんだい? つくし君」
「彼女の身にもなってください。彼女の親友がデスゲームに参加させられると確定してしまったのですよ⁉ それに、自分の考えたルールで! 自分の作ったゲームで‼ それでも、」
胸が、かっと熱くなった。
この人は、あたしのためにここまで反抗してくれているんだ。それも、あの己龍に。
一方のあたしは、自分のことなのに仕方ないとあきらめて、うじうじしているだけだった。
その剣幕は己龍に向けられているはずなのに、あたしがひるみそうになった。
「それでも?」
なのに、彼には人の心がなかった。つくしさんに向けている彼の視線は凍りついている。
「仕方ないだろう? 運悪く選ばれてしまったのだ。確率はとても低かった。それなのに選ばれてしまっ
た可哀想な人たちだ。
それは、この参加者全員が同じだ。このゲームの参加者は運に見放された者たちの集まり。それを丁寧に扱う意味などないだろう?
それとつくし君、君は私に反抗することに対する罪の大きさを一番知っているはずだ」
つくしさんは黙りこむ。仕方がなかった。だって、完膚なきまでの敗北だったから。
(……!)
その様子を間近で見ていたのに、あたしはあきらめることができなかった。
…………月見を、人間を。そんな風に言うな。
気持ちが爆発したから、あたしは――。
「――――」
「一体どうしたんだい、ヒカル君」
「――――やめて、ください」
それは、独裁者に初めて反抗した瞬間だった。